雨の日・・・



窓に当たった滴がガラスを伝って落ちていく。
夜中から降り始めた雨は まだやむ気配がない。
身体をベッドに横たえたまま窓の外を見た。
窓から見える木々も雨に打たれて葉を揺らしている。
穏やかに降る雨に音はない・・・いつも聞こえる鳥の声も、人々の声も・・・。
まるで誰もいない空間にただ一人いる様な気がしてくる。

静かな静かな空間。



どのくらいの時間がたったのだろう。
霞んだ景色を見つめ続けていると
ふいに後ろから伸びてきた手に抱き込まれる。
そっと優しく・・・・

そのぬくもりに、ほっと息をつく。

・・・あ、そっか・・・一人じゃなかったね・・・

ここは巽の家で、巽のベッドで、巽の香りに包まれていたのに、
つい、いつもの癖で雨の世界に引き込まれていた。




「おはようございます・・・」
早いですね、と耳元にかかる息がくすぐったい。
首をすくめた。
大好きな、大好きな声。

「おはよう・・・巽。」
前に回された手に口づける。
大好きな温かくて愛しい手。
いつも自分を守ってくれる光。
大切な光。



「雨、やみませんね。」
「うん。」
「今日はどうします?」

晴れていたら出かけようと昨晩話していたことを思い出す。
久しぶりの休暇、お弁当を持って少し遠出をしようか・・・と決めていた。
昨日まではとってもいいお天気だったから。
おかずを何にするか、仕事帰りに買い物をして・・・笑って。
暖かい食卓。
そしてその後の
優しい抱擁。



「・・・・・このまま・・・いい?」
小さく呟く。
出来ることなら一日中こうやって感じていたい。
お弁当を持ってドライブもしたかったけど、
雨が降った日はこうやって寄り添うように過ごしてみたい。


「・・・いいですよ。」
くすっと笑う声が聞こえた。
甘えん坊さん・・・、と囁かれる。


・・・・巽だけだよ・・・・


身体の向きを変えた。
柔らかな蒼い瞳を見つめる。
この瞳も好き、特にその瞳に自分しか映っていない時が一番好きだ。


「巽・・・」
そう呼ぶと、廻された手が強くなった。

雨音も強くなった・・・・。


ふたりだけだね・・・・今は俺達しかいないね。
雨のカーテンに仕切られたこの部屋で
ぬくもりに包まれて。



大好き・・・・心の中で何度も呟いた。





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