Saturday



遠くで鳥の声が聞こえる。

夜が明けたようだ・・・。

やはり眠りが浅かったようだ。



昨日はとにかく都筑さんを連れて帰ってきて食事を済ませた。

話は食事の後で・・・と決めていたため、いつもと違った雰囲気の中での食事となった。

とりあえず予定していたものを並べるが、話が弾むまでもなく味は申し分ないはずなのに

美味しくは感じられなかった。

それはあの人も同じのようで、いつもに比べたらかなり少なめの食事のようで。


片づけをしている間、話すことを考えているのか・・・ぶつぶつ何か言っているようだが

あえて気にしない振りをしていた。

皿を拭きながら風呂が先が良いのか、話が先が良いのかなどと、ぼんやり考えたり・・・

互いに心ここにあらずの状態だったと。



「さ、心の準備は出来ましたか?」

「えー・・・うん」

何か言いたそうな顔をしていたが、返事だけしてきた。

「何から聞きましょうか・・・・そうですね、水曜日午後から何処に行ってました?」

「水曜日・・・」

「午前中携帯にメールばっかり送ってた日です。午後からあなたいなくなったでしょう!」

「・・・・・前から行きたかったお店がね」

「店? 何の?・・・って聞く方が野暮ですかね」

「・・・・うん、ケーキやさん。そこが開店記念の日だって思い出して、それで・・・・」

「それで?」

「ちょっと地上に・・・」

「・・・・仕事は?」

「あ、・・・えっと、亘理には言ったけど」

「誰に言ったとか聞いているんじゃないんですよ! 仕事をほっぽり出して行ったんですね!?」

「はい・・・・」

「ま、それはこれからのこととして・・・で、どうしたんです? ケーキを買いに行くぐらいなら少しの時間で済んだでしょう」

「混んでたし・・・・」

「都筑さん・・・この期に及んで隠し事は・・・・」

苛々するのを抑え込んで話を続けた。

「お金が足りなくなって・・・」

「・・・・・」

「で、買って貰って・・・」

「都筑さん、省略しない! ちゃんと話しなさいちゃんと!」

「・・・・ケーキを買いに入ったら、あれもこれもって目移りしちゃって・・・・でも持っているお金じゃ全然足りなくて、悩んでいたら、あいつが声をかけてきて」

「あいつってあいつですか」

「そうです」

「はああ・・・・」

大きな溜息をつく。どうしていつもこうなのだろう、言っても言っても隙だらけで、隙の大セールをしているようだと思ってしまう。

「アンタねえ・・・・あいつがどんな奴か分かっているでしょう? 何でそんな人間に買って貰うんですか? ええ?? 私には信じられませんよ」

「俺だっていいって言って断ったんだよ!」

「でも買って貰ったんでしょう」

「そ、そうだけど・・・・・でも代わりに、ちょっとお茶するだけでいいとか言われたし、一緒にお茶飲むくらい少しの時間だし!!」

そんなに悪くないぞ!と言わんばかりに反論してくる。

「それで?」

「そ、それで・・・店を出て・・・あいつが贔屓にしているところがあるっていうから、そこに・・・・」

「黙ってついていったんですか?」

一体何処まで・・・;;

「変なところだったら・・・・と思ったけど、別に普通のお店だったし・・・紅茶も美味しかったし、デザートも」

「そこのお店が美味しいかどうかなんてどうでもいいんですよ!それよりも話を先に進めなさい!」

「で、食べて話をして」

「何の話ですか!」

「い、色々・・・だよ、別に世間一般の・・・」

ま、ここら辺もちょっと後で・・・ですね。

「それから?」

「終わったら帰るつもりだったんだけど、食べ終わるころになって何か眠くなって・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・何で黙るんですか」

「・・・・気づいたら」

「気づいたら?」

「何処かのホテルの部屋で、その・・・」

「・・・・都筑さん・・・・」

「え?いや何にもなかったんだよ!! ベッドの上で目が覚めたけど、あいつはいなくて・・・いや、いたんだけど・・・その・・・」




・・・・・こんな風で真相が分かるまでに3時間は要したのではないだろうか。

結局は黒崎君が後を追っていて、都筑さんの場所を突きとめ、部屋に押し入って・・・らしかったが・・・。

これがもし黒崎君が後をつけておらず、あの白い変態にいいようにされていたら・・・・と考えると、何とも情けなく腹が立って・・・・。

黙り込んだ私に、申し訳なさそうに少し目を潤ませていたあの人は、昨日はパジャマを渡すと自分から客室のベッドに向かって行き、私もそのままに自室に戻ったのですが・・・。



どうせこんなに眠れないのなら、あのままとことん話し合えば良かったと。


”おまえたちに欠けているもんは「話し合うこと」や”

何処かの誰かに言われた言葉が思い出される。

そうですね・・・・いつもそうでしたね。



私はドアを開け、まだ眠っているであろうあの人のいる部屋に足を進めた。








・俺っていいこと言うなあ〜なあ、坊! by亘理
・俺・・・これから起こること聞きたくないんですけど? by黒崎