Tuesday


「ええーーーー嘘!」

休憩室ではないはずのこの部屋で、くずきりの入った器を持ったまま彼が叫んだ。

「・・・こんな事嘘ついてどうするんですか」

「だって、俺、聞いてないよ!」

「そうりゃそうでしょう、私だってさっき知ったんですよ!」

「何で急に・・・」

「課長がぎっくり腰になったんですよ・・・・」

「また・・・?」

「そう、また・・・」

もう今年に入って2度目だ。

「なんで?」

その問いかけに私は目で原因となった隅の箱を示した。

昨日の夕方、課長室の掃除を始めた矢先のことだった。

何も今する必要はないのに、思い立ったらしなくては気が済まないらしい。

案の定、重い箱を持ち上げようとして・・・・。

まったくもってはた迷惑な話だ。

もしかして、明日からの出張をサボる為にやったんではないかとさえ考えてしまう。

ありえる・・・ありえることだ。

「・・・えっと・・・じゃあ、いつまで?」

箱から目を戻した彼はおおかたのことは察したらしい。

器をテーブルに戻して、尋ねてきた。

「金曜日です」

「え? そんなに? 今日火曜日だよ?」

「・・・ですね」

そんなあ・・・と、がっくり肩を落とすと、彼は大きく息を吐いた。

「あ〜あ、つまんない・・・・」

「・・・・そうですか?」

少しだけ意地悪になってしまう。

彼が淋しいと感じてくれることが少しだけ嬉しい。

「今週全部居ないようなものじゃん・・・・」

そうなりますね・・・・と答えながら、彼の側に座った。



テーブルの上の硝子の器は汗をかいていた。

窓から入る風はいつの間にか止まっていた。

「都筑さん・・・」

そっと指で横から髪を触る。

「明日から3日間だよ?」

ため息混じりでの呟き。

「なるべく早く戻るようにします」

「でも・・・」

「電話も入れますし」

「う〜ん・・・・」

「あなたが出張の時はもっと長い時もあるでしょう?」

「でも・・・・あれは仕事だから・・・・それに食費は出るし・・・」

「・・・・は?」

「いくら経費が切りつめられてもとりあえずは保証されてるし・・・・」

「・・・・保証?・・・・何の話です」

「え?」

彼は首を傾げる。

「・・・・食事」

「食事?」

「うん・・・・俺、今週どうしよう・・・巽がいないんじゃ・・・」

何を食べたらいいのかな・・・と、言葉が続く。

それを聞いた途端、急降下で機嫌が悪くなってきた。

「・・・・・都筑さん? もしかして・・・・あなたが落ち込んでいるのは私が居ない間の食事の心配ですか・・・・?」

「うん」

明日からどうするんだよ・・・・っという言葉が続く。

「・・・・・・」

すっかり、自分が居なくなることを寂しがっているのかと思ったのに・・・。

「・・・・巽?」

黙っていると、どうしたんだ?とこっちを向いてきた。

「・・・・食事なら黒崎君にでも作って貰えればいいでしょう?」

「密に? ダメダメ、何でお前にそんなコトしなくちゃいけないんだ!とか怒られるだけだよ」

「・・・・私だってそうかも知れませんよ?」

そう言うと、彼は目を大きく見開いた。

「・・・・巽、・・・マジで?」

・・・え?

うるうると、その大きな目に涙がたまる。

「え・・・・巽って、嫌だったの? 俺の食事作るの・・・・」

「あ、いえ、嫌だというわけでは」

「俺・・・・巽に甘えてたんだね」

途端にしょんぼりと下を向く彼に慌てて言葉を補ってしまう。

「そ、そんなことあるわけないでしょう? いつもあなたが美味しそうに食べてくれるから私は・・・」

「・・・・本当に? 無理してない?」

「してるわけないでしょう。嫌ならしませんよ、私は!」

「信じて良いのかな・・・・」

当たり前でしょう!!!

私は我慢出来ずに目の前の身体を抱きしめてしまった。

「・・・・うん、ありがと」

小さく呟く都筑さんの顎をそっと上に向かせて、私は顔を近づけた・・・・。



なんか・・・・ずれたような気がするのは気のせいでしょうか?








※どうでもいいけど・・・・・課長がおらんようなったら、途端に課長室に鍵かけるのやめてくれ;;
ノックも出来んわ・・・・怖くて・・・・    by 亘理
※留守中の都筑の食事の面倒は見ませんからね。 by黒崎





2004・7・6  Mai・Hinase