いつまでも・・・




ふと目が覚める。
微かに聞こえる雨の音。
いつの間にか寝付いていたようだ身体を起こし、部屋を見渡す・・・彼の姿はない。
この館から出ることは無いと思ってはいるが、姿を見ないことには不安で仕方がない。

「・・・っ。」
ベッドから降りるとと同時に肩に激痛が走った。
その痛みが昨夜の出来事を思い出させる。
いつまでも・・・いつまでも繰り返される事。
雨の中を夢中で逃げた。


大きく息を吸い痛みをやわらげる。
今はとにかく彼の側にいたい、ただそれだけ。




部屋を出ると彼が通ったであろう廊下を歩く。
出血はないものの、ドクドクと脈を打つように伝わる痛みは止まらない。
熱も少し出ているのかもしれない。


どのくらい歩いたのか・・・・大きな窓のある部屋に彼はいた。
子供のように窓に手をつき、灰色の空を見上げていた。



その目には何が映っているのか、自分には分らない。
何を思っているのかも。
けれど彼が今、此処にいる。
それが全ての答えのような気がした。





「不思議だね。」
気配に気づいたのか、振り向きもせずぽつりと呟いた貴方の言葉に窓の外を見た。
霧のように降る雨は、ここから見えるいつもの景色を霞ませる。
「・・・・何がです?」
答えが分っているのに問い返す。雨の日の彼のセリフだから。
紫の瞳がすっと閉じられる。
「世の中にお前とふたりっきりのような気がする・・・」
こういう雨の時には・・・と答えた。
「後悔・・・・していませんか?」
していると言われても、もう選ぶ道もないのに問わずにはいられない。
もう何回も繰り返した問答。


「してないよ。」
閉じていた瞳を開き、真っ直ぐに見つめてくる。
その強い光はどこから来るのだろう。
「・・・・・ありがとうございます。」
私が少しだけ微笑む、貴方も微笑んだ。





彼を慈しむ全てのものを引き剥がし・・・切り捨てさせた。
貴方も望んでいることだと囁きながら、全ては自分の欲望のため。
逃げて逃げて、たどり着いた場所。
ここが安住の地になる保証もないのに。

「邑輝・・・」
見つめられたまま名前を呼ばれた。
無言で身体を引き寄せて抱きしめる。
誰にも渡さない、私だけの愛しい人。
「愛しています・・・」
その言葉に貴方が私の肩に手を置いた・・・。
傷ついた肩に。
「うん・・・。」
薄い布地を通して感じるぬくもりは他の誰のものでもない。






この雨が全てを流してしまえばいい。
貴方がいて私がいる・・・ただそれだけで・・・。
傷だらけの心と体を 今ひとつにして・・・・。
いつまでも。


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