見上げた空
姿を探して庭の木々の中に分け入ると 黒い頭が幹からちょっと見えているのを見つけて ほっと溜息をついた。 眠っているのかも知れない・・・ 足音をたてないようにそっと近づいた。 木の後から覗き込むと 脱いだ上着を抱え込んでいる彼がいた。 微かに聞こえる規則正しい寝息に微笑んで横に腰を下ろす。 起こさぬように少しだけ肩を抱え込むように自分の身体に寄せると 「う・・・ん・・・・」 小さく声を出して胸に顔を押しつけてくる。 それが可愛くて愛しくて もっと強く抱きしめそうになった。 綺麗な色の髪に頬を寄せると彼の香りがした。 こんなにも心が安らぐ事が不思議で そして幸せで・・・。 出来ることならこのままこの人と一緒に夢の国に行きたい・・・ そんなことまで思ってしまう。 ・・・何の夢を見ていますか?・・・ 身体に彼の温もりを感じながら心の中で呟く。 そして同時に その中に自分はいるだろうか・・・とも問う。 いつでもどんなときでも貴方の瞳に自分が映っていたい・・・・ そんな我が儘をいつの頃からか願っていた。 心が通じた今でも それは変わらぬ願い。 『コンラッドは青空は好き?』 いつか聞かれたことを思いだした。 『真っ青な空に白い雲がぽっかり浮かんで・・・俺は大好きだな』 そう言って笑った貴方・・・俺はあの時何と答えたんだろう。 そんなことを思いながら空を見上げる。 木々の枝の間から見える青い空は彼の好き綺麗な色で 全ての物を包み込む透明な色合いに満ちていた。 もぞっ・・・ 腕の中の動きに視線を落とす。 「ユーリ・・・・起きましたか?」 そっと囁く。 「う・・・・ん・・・コンラッド?」 まだ顔を上げないままに返ってくる答えに 「ええ」 と答えた。 そろそろギュンターが騒ぎ出す頃だ。 起こして連れて行った方が良いだろう。 まだまだ慣れていない所もあって自分が思う以上に疲れているのかも知れない。 でもこの人は前に進む人だから・・・自分はそんな彼の何かに役立てば・・・ それが今の唯一の願い。 「ユーリ」 もう一度名前を呼んだ。 その声に軽く頭が揺れて・・・貴方が顔を上げた・・・・ はっと目が覚める。 目に入ってきたのは まだ薄暗い部屋の天井だった。 ぼんやりした頭で何度か目を瞬いて半身を起こす。 自分の腕を見下ろした・・・さっきまで感じていたはずの重みはそこにない。 ・・・また見たのか・・・ 心の澱みを感じ 深く息を吐き出した。 もう何回目か分からないほどに見た夢 あの人を探して 見つけて その身体を腕の中へ抱き込んで 声をかけて・・・ でもいつも あの人の目が開くその時にいつも夢から覚めた。 絶対に見られないあの人の瞳・・・ 繰り返し繰り返し見る夢。 もう思い浮かべることでさえ罪なのか・・・と苦笑する。 離れたのは自分からなのに 何故だと問う彼に答えないままに離れたのは自分の意志なのに。 ベッドから降りて窓辺に立った。 まだ星が瞬く空を眺める。 今日が晴れるのかどうかなんて考えなくなった。 空のことなんてどうでもよくなった。 異国の地で見上げる空は あの日の空と違うものだ。 『コンラッドは青空が好き?』 あの言葉が頭をよぎる。 心を苦しくさせる言葉。 もう遠い遠い昔のように感じる。 「・・・・貴方と見上げた空が好きでした・・・」 出来ればいつまでも夢のように語って 笑って・・・・ 叶わぬ願いを いつまで自分は追い続けているのだろう。 幸せな夢の後は 届くことはない想いが溢れ出て涙が出そうになって・・・自分が嫌になる。 |
2005・10・25
日生 舞
なら、早く帰れ!と叱咤激励したくなりました(次男好きです 笑)
時制的には陛下の元を離れてそこそこ時が経った頃?
聖砂国編の前ぐらいでしょうか・・・
でも個人的にはこんな切なさはツボでもあります・・・