花見
| 「なんだ、じゃあお前今年は花見に行ってないんだ?」 そう宮坂は言い、手にしていた缶コーヒーを飲み干す。 自分の仕事が終わったからと30分も前から居座っている。 ここは香藤の控え室。 「色々と忙しくてな」 雑誌を捲りながら短く返事を返す。 実際なかなかまとまった時間がとれず、思い立った時はもう散り際でタイミングを外してしまった。 でも・・・・別の意味の花見なら家でたっぷりしたから良いけど・・・と 不意に昨晩の様子が思い出され、香藤はくすっと思い出し笑いをした。 誌面に載っている桜の写真でさえ愛しい人に見えてしまう。 ここ1ヶ月はその点がすこぶる順調だった。 「・・・したんじゃないの? 別の花だろうけど」 そんな香藤の様子を見て小野塚が言った。 宮坂が来るこれまた30分も前から此処に来ていた。 「え?何だよ、別の花って」 その言葉に宮坂が反応した。 微かに眉を寄せ、香藤は軽く咳払いをする。 「普通花見って、桜じゃないのか?」 「桜でしょ、なあ香藤?」 「・・・・」 その問いには答えず頁を捲る。 「はあ?意味わかんねえ〜さっき別の花って言ったじゃん」 訳が分からないといった顔で聞いてくる宮坂を小野塚が見る。 まあ・・・ある意味癒されるかもな・・・と軽く溜息をついてみた。 「・・・・ま、とにかく香藤は花見はしたみたい・・・・って話」 「あ?なんだよそれ?」 ますます分からなくなる宮坂。 「・・・小野塚」 香藤はにやにやとする小野塚を軽く睨み付ける。 でもそんなものは全然気にせずに宮坂の方へ向いた。 「ま、俺達も後で花見はするけどね」 「もう桜は散ってるだろ?」 「ば〜か、香藤のお花に会いに行くんだよ」 少しだけ間があった・・・・。 「なっ!」 「えっ!?」 香藤と宮坂が同時に声を出し立ち上がる。 嬉しそうな顔と当惑する顔を小野塚は面白そうに見比べた。 「ど、どういうことだよ!」 「さっき岩城さんに連絡取ってOK貰ったから」 とパカッと携帯を開いて小野塚がメールを見せる。 そこには岩城からのメールがあった。 「何、勝手に岩城さんに連絡とってんだよ!」 「別にいいじゃん、仕事の先輩にメールしただけでしょ」 「おまえなあ」 「なあなあ小野塚、何か持っていくよな? 何が良いかな」 宮坂は子供のようにはしゃぐ。 「そこっ!行く気になってんじゃない!」 「えええ!? いいじゃん、俺、岩城さんに会うの久し振りだし」 「そうそう、俺も役のことで相談したいことがあるんだよね〜」 「嘘をつけ!嘘を!」 お前がそんな相談するか!と文句を言うが、 もうふたりは手土産のことなんか話しあって香藤の言うことなど聞いてもいない。 「花・・・いや、やっぱり食べる物の方がいいか」 「そうだな花に花を持っていってもな」 「ちょっと、おまえら聞けって!」 ちょうどその時、ノックがしてドアが開く。 「香藤さん、時間です・・・・って、あれ?小野塚さんと宮坂さん」 顔を出した金子がふたりを見て会釈する。 「ほらほら、香藤くんお仕事のお時間ですよ?」 にっこり笑う小野塚が憎たらしい。 「俺達先にお邪魔して岩城さんとお前の帰り待ってるから」 「おう!頑張って仕事してこい!」 宮坂が明るく手を振る。 「待て待て、俺が帰るまで行くな!っていうか元から行くな!」 「香籐さん、時間が!」 動こうとしない香藤の腕を金子が引っぱる。 「あ、ちょっと待って金子さん、こいつらが勝手に・・・」 「勝手じゃないでしょ、ちゃんと岩城さんに許可貰ってるんだから」 「そうそう」 「ほらほら、ちゃんと仕事しないと岩城さんに言いつけるよ?」 「小野塚てめえぇ〜・・・って金子さん、ちょっと、わわっ」 「香籐さん、いい加減にしてください、時間がないですって!」 「わ、ちょっと・・・・こら〜分かったか、おまえら!俺が帰るまで行くんじゃないぞ!!」 「いってらっしゃーい」 部屋から引きずり出されるように連れて行かれる香藤に手を振るふたり。 「小野塚〜覚えてろよ〜!」 香藤の声が廊下にこだまして遠くなっていき・・・・・。 きっとこれからの仕事は散々だろう。 帰りが予定よりも遅くなるかも知れない。 小野塚は振っていた手を下ろした。 これだからやめられない。 やっぱり一服どころではない清涼剤だ。 ここ数日仕事絡みでもやもやしていた気分が少し軽くなる。 「宮坂、うまい酒でも買っていこうぜ」 「そうだな!」 ウキウキと荷物をまとめる宮坂を見つつ、今日は楽しい晩になりそうだと小野塚は思った。 |
2006・5・9
日生 舞
こんな雰囲気が好きです
恋愛ドロドロじゃなくて
そこにあるのはただ単に香藤くんをからかいたいという気持ち・・・
もちろんこれが小野塚くん流の彼らへの接し方っていう風
宮坂くんをいまいち(どころじゃないけど)とらえきれてない感、ありあり(苦笑)・・・
反省点です(^^ゞ