不機嫌 のち ご機嫌
その夜。 香藤は急いで帰宅した。 小野塚からの伝言を確かめるべく、岩城の携帯に何度もかけた。だが電源が落ちてるか電波の届かない場所にという案内だけで、全く繋がらなかった。 マネージャーの清水は、子供の病気のためにロケ先には行かないことを聞いていたので、頼りにならない。 結局、時間ギリギリに家にたどり着いてふと見ると、玄関に電気が付いていた。 「え?ウソっ。まさかっ!」 疑問と期待が混ざり合い香藤の足を急がせる。 ただいまっ、とリビングに飛び込んだ香藤の耳に、よく知った友人達の笑い声が聞こえてきた。 しかしそこには、ソファーに座りテレビを見つめる岩城だけ。 不思議に思って画面を見れば、うなだれる自分と笑い転げる宮坂と小野塚が。 「なんでーー?」 あわあわと叫ぶ香藤に岩城はため息をつく。 「人の事をなんだかんだ言う割に、お前の方こそ無防備なんじゃないのか?こんなにあっさり騙されて」 「え?騙されてって…、はっ!まさか!!」 「俺はお前に首輪を買った覚えも、プレゼントを他人に任せた覚えもないぞ」 岩城の言葉に漸く騙されていたことを知る。 「今日8時頃に帰れることになったって伝言を、小野塚くんに頼んだけどな」 「ああああ〜(泣)」 まるで魂が抜けるかのように脱力して、香藤は床に転がった。そして、ううっ、俺って〜と、泣きを入れる。 「仕方ないやつだな、全く。ほら、起きろ」 岩城は再びため息をつくと、香藤に歩み寄り、身体を起こさせて抱きしめた。 「おかえり、香藤」 宥めるように香藤の背中をトントンと叩く。香藤はそんな岩城に、甘えるように すり寄った。 「ん。ただいま、岩城さん。…でも、ロケは?一週間の予定じゃなかったの?」 「ああ。監督の都合でな、日程がズレたんだ。明後日まで休みになった」 「ホント?じゃ明日はずっと一緒だ。やった!」 香藤は泣き顔を一瞬にして笑顔に変え、岩城に飛びついた。 微笑みあって視線を絡ませ、唇をゆっくりと寄せていったその時――。 突然の奇声が雰囲気をぶち壊した。 二人で首だけ動かして画面を見ると、宮坂に羽交い締めにされた香藤に小野塚が首輪をかけるところだった。 3人でひと騒ぎして、その後、香藤から2人が逃げる。宮坂はドアへ進み、小野塚がこちらへ寄ってきて、そこで映像は終わった。 「あー!今思い出しても腹立つー!!」 2人にからかわれた時の怒りが再び蘇ってくる。 「てゆーか、この映像なに?どっから持ってきたの?どーしてこんなの岩城さん見てんの?」 怒りに任せ、岩城の両肩をガシッと掴み、まくし立てた。 「そーだよ。そもそもなんで小野塚なんかに伝言頼んだんだよ。携帯も全然つながんないしさ!どーゆーことなの、岩城さん!!」 事情を聞いてみれば、携帯は電池切れ。そこにロケ先で一緒だった小野塚が居合わせて、香藤への用事のついでにというので、伝言を頼んだということだった。 そう言われて、今度のドラマでも岩城が小野塚と共演してることを思い出した。 「それにこれは、俺が帰ってきた時にちょうど小野塚くんがやってきて、香藤が来る前に見てください、って渡されたんだ」 「だからってさー。な・ん・で、小野塚なんだよっ」 バシバシと床を叩きながら喚いていた香藤は、岩城の眉間にシワが寄っているのに気付かなかった。 「…それより香藤。お前、小野塚くんに首輪されたのか?」 「えっ!?」 岩城のこめかみにはしっかりと青筋ができていた。しかも不穏な気配が岩城から立ち上る。 「…あ、だって二人がかりでだったし。それに…」 「うるさいっ!軽々しく首輪なんてされてるんじゃない!!」 そう香藤を一喝し、ガツリと香藤の頭を殴りつけるとリビングを出ていった。 「痛――っ(涙)。あっ、ちょっ、待ってよ、岩城さ…」 追いかけた香藤の目前でピシャリとドアが閉まった。 「なんで、怒ってんの――(泣)!?」 取り残されたリビングに、香藤の声が虚しく響いた。 風呂上がりの岩城が、リビングのドアをゆっくりと開けた。 その視界に、背中を丸めた大型犬が入ってくる。ソファーの上で横向きに座り、 膝を抱えてめそめそと落ち込んでいる香藤だった。 岩城はそっと近づいて、背を向けてる香藤の、その後ろに座った。 「香藤?その、すまなかったな。ヤ、…八つ当たりして」 ピクリと肩が動いたがそれだけだった。 「少し早いが誕生日プレゼントやるから、さっさと風呂入って来い」 岩城は立ち上がり、くしゃりと香藤の髪をかき回す。 「…上で待ってるぞ」 離れていく岩城の気配を感じながら、香藤はあることに気付き頭を上げた。 急いで駆け寄って、リビングを出ようとしていた岩城を、後ろから捕まえる。 「こら、何するんだ!」 「ねぇ、岩城さん。八つ当たりってことは、俺のこと怒ってたんじゃないってことだよね。じゃあさ。誰を、どうして、怒ってたの?」 香藤の目の前にある耳が真っ赤になった。 「岩城さん。教えて?」 「………」 だが岩城は答えず、香藤の腕から逃れようと身体を捩った。 「ふーん。じゃあ、誕生日プレゼントって何くれんの?俺はこのバスローブでラッピングされた、俺の最愛の人がいいなv」 赤くなった耳に直接吹き込むように囁いた。しかもついでのようにペロリと舐めて、耳たぶを甘噛みし始める。 岩城はため息をついて、ゆっくりと力を抜いた。首だけ振り返って香藤の頬にキスを落とす。 「ああ、お前の一番欲しいものをやる。好きにしろ」 『よし』の声を聞いた香藤は、岩城を抱え上げると、急いで寝室に直行した。 岩城を自分のベッドにドサリと少し乱暴に降ろす。その勢いのまま覆い被さり、抗議のために開かれた唇をキスで塞ぐ。 「あっ、おい。…待っ…んんっ」 岩城の手は始め抵抗して背中を叩いたり、髪を引っ張ったりしていたが、次第にすがりつくものへと変わっていく。最後には指先まで甘く痺れて、力が入らなく なっていた。 その後もひとしきり岩城の唇を貪り、漸く解放した時には、息も絶え絶えで、快感にとろけきっていた。 「少…、しは、待てない、…のか」 「待てるわけないでしょ! 24時間、365日一緒にいても足りないくらいなのにっ!! どれだけ岩城さんに触れてなかったと思ってんの!?」 荒い呼吸の中で文句をつければ、そんな言葉が返ってくる。 香藤の相変わらずの想いに、岩城の身体の奥から熱いものが溢れてくる。それと同時に岩城の気配が艶(あで)やかさを纏っていく。 変化する岩城に見とれていた香藤は、だから反応が遅れた。 首の後ろに回された手に引き寄せられ、岩城に唇を塞がれる。今度は岩城が香藤の唇を激しく貪った。 「やっぱ、スゴいね。岩城さんの、本気のキスって。もう、キスだけでイクかと思った」 「………バカ」 激しいキスの後、次へ進むために香藤が身体を起こす。 「それじゃ、誕生日プレゼントいただきます!」 両手を合わせてから、リボンをほどくようにバスローブの紐をほどき、包装紙を開くようにバスローブを丁寧に脱がせていった。 自分の服は乱雑に手早く脱いでいく。 そんな香藤を見上げながら、思わず岩城は口にする。 「首輪なんか無くても、お前は、俺のものなんだな」 「何言ってんの? 今更。俺は、最初からずっと、岩城さんのもの…」 はたと、岩城の瞳を見返した。 「ね。岩城さんがさっき怒ってたのって、小野塚の事?俺に首輪したから」 ニヤリと香藤の唇が歪む。 「それってもしかして、ヤキモチ?」 「…そんなんじゃない」 香藤の指摘に、岩城はそっぽを向く。だが、上気した頬が更に赤くなり、香藤の言葉を肯定する。 「首輪なんか無くてもさ。俺は、岩城さんの存在そのものに縛られてるんだよ」 そう言って岩城の赤い頬にキスを落とす。 「だから、ペットでも何でもいいから、岩城さんの好きにして」 「バカ。今の俺は、プレゼントだろ」 「そうでした(笑)」 香藤は岩城の全身に優しくキスをしながら、性急に後ろをほぐす。 そして、いくよ?と声をかけたものの、岩城の答えを待たずに、一気に挿入した。 久しぶりだからゆっくり優しくしないとという、岩城を気遣う気持ちは、岩城の熱に包まれた途端に霧散する。 「ああっ。かと…、はやっ…く。んんっ」 岩城も身体のキツさはあったものの、溢れてくる熱情に先をねだる。 そのまま2人で高みまで駆け上った。 朝まで岩城を離さなかった香藤が、ミネラルウォーターを取りに階下に降りてくる。 冷蔵庫の扉に手をかけた所でふと顔を上げる。 ソファーに置かれたままの岩城のセカンドバックから携帯を取り出した。 充電用のコードを繋ぎ、電源を入れる。そして目当てのメールを探し当てた。 そこには『首輪プレイなんてどうです?』というメッセージと、香藤にとっては屈辱の画像。 『もっと凄いコトを楽しんだよ』と返信し、メールごと画像を削除した。 そしてペットボトルを持って岩城の待つベッドへと戻る。今日は1日ベッドから出さないからね〜v覚悟しといてよ!と、心の中で岩城に宣言しながら。 2006.6. 玖美 |
玖美さんからのフォロー編いただきました(^O^)
(前作「不機嫌 時々 悪戯」を読まれたからの方がいいと思いますv)
あはは、香藤くんったらv
でも岩城さんと結果的に美味しいことになって良かったね〜v
嫉妬する岩城さんがとっても可愛いです〜vvv
おめでとう、香藤くん〜
岩城さんの本気のキス・・・ドキドキします!
玖美さん、本当にありがとうございます!
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