不機嫌 時々 悪戯
コンコン。 ドアがノックされ、返事を待たずに開けられる。 入ってきた人物達を確認した途端、香藤は目を眇め、ふいっとそっぽを向いた。 「おっじゃま〜」 「よぉ!…って挨拶ぐらいしろよ」 香藤に用意された控え室に訪ねてきたのは、小野塚と宮坂だった。 だが香藤は見向きもしない。 鏡の前の椅子の上で、抱えた膝に顎を乗せ、口を尖らせて、思いっきり不機嫌の 看板を背負っている。 「うわ〜。どうした〜。ゴキゲンナナメじゃね?……シカトすんなって」 宮坂がワザワザ香藤の顔を覗き込むが、香藤は身体ごと横を向いた。 「んなの、決まってんじゃん。な?香藤」 「あ?」 「愛しの岩城さんに会えなくてサビシー!、ってやつだろ」 「なにお前!?振られたんかよ」 「んな訳あるかっ!!」 否定の言葉と共に、ガシッと宮坂に香藤の蹴りが入る。 「痛っ!人がせっかく心配してやってるっつーのに何しやがる」 「うっせー!!心配なんて、これっっっぽっちもしてねーくせに。恩着せがましー んだよ」 「あ〜?なんだと〜(怒)」 本格的にじゃれ始めた香藤と宮坂をほっといて、小野塚はさりげなく目的の物を セットしていく。 そして準備を終えて、漸く香藤へと向き直った。 「そういえばさ。昨日岩城さんに頼まれたんだけど…」 「岩城さんがなんだって?」 岩城の名前が出た途端、宮坂を押しのけて小野塚に迫った。 「明日のお前の誕生日。岩城さんいないんだって?」 「…それがどーしたよ」 地を這うような低い声で香藤が答える。 そうなのだ。岩城はロケに出ていて、明日どころか一週間も会えない。しかもそ の前からなんだかんだとすれ違いが続き、ここ半月ほど顔を合わせていない。 その上、自分の誕生日にも会えないとなれば、香藤の機嫌が最悪なのも頷ける。 金子などは、いつ香藤が岩城目指して暴走するか、戦々恐々としているくらいだ 。 そんな香藤の目の前に、 「ほれ」 とプレゼントらしき包みが差し出される。 「なんだよ、これ」 「頼まれたって言っただろ?岩城さんから」 「………」 疑いの目を向ける香藤の後ろから宮坂が覗きこんだ。 「何々?岩城さんからのプレゼント?」 宮坂の手が伸びる前に、小野塚の手から包みを奪いさる。 しかし小野塚の性格を考えると、イタズラの可能性も捨てきれない。 「なあなあ、何貰ったんだよ。もったいぶってないで見せろって」 香藤が躊躇していると、背中に懐きながら宮坂が話し掛けてきた。 「早く開けろや。ちゃんと渡したっつー写メ、岩城さんに送んだからよ」 小野塚も催促してくる。 こいつらの前で開けたくはない。開けたくはないが、しかし…。 長い逡巡の末に、渋々と包みを開ける。 そして中身を取り出した。 「………;」 「赤い、ベルトと。……紐?」 「…どう見ても、首輪とリード。だな」 宮坂の不思議そうな声に、小野塚が答える。犬を飼ってる小野塚にはサイズは違 えど見慣れたものだった。 「……岩城さん(泣)。なんで〜!?」 ――やっぱり岩城さんの中で、俺って犬決定なわけ? ガクリと香藤がうなだれる。 それと同時に小野塚と宮坂が爆笑した。 「い、岩城さん。…サイコーっ」 と宮坂は床をバシバシ叩きながら腹を抱えて笑い転がり、小野塚に至っては笑い 過ぎで声も出ない。 香藤は、そんな2人を怒る気力もなく脱力していたが、ふと顔を上げる。 ――犬じゃなくて、スレイブ扱いだったらどうしよ。佐和さんの店に行った時の プレイで、やみつきになったとか。元々岩城さんそーゆうの得意だし。うわ、ド キドキする…、って何考えてんだよー、俺!Mじゃない、Mじゃないからね!!て ことは、やっぱ犬!? グルグルと回る思考に再び頭が落ちた。 漸く笑いが収まった2人は、涙を拭きながら身体を起こした。 「愛されてるな〜、香藤」 「まさかペットだったとはねぇ」 香藤の肩をそれぞれにポンと叩く。 「………うるせ」 言い返す気力も無い香藤の頭上で、悪友2人は目線を交わしニヤリと口角を上げ た。 そして、それっとばかりに宮坂が香藤に飛びかかって羽交い締めにし、小野塚が 香藤の手から首輪を奪う。思いっきり油断していた香藤は慌てて暴れたが、あっ さりと首輪をはめられてしまった。 「おお〜。似合う似合う」 「ぶぶっ(笑)。カワイーじゃん」 「お前ら〜。何すんだよっ!離せ、こらっ(怒)!!」 首輪を外そうと香藤はもがくが、宮坂に押さえられて出来ない。その間に小野塚 は携帯を取り出した。 「ほんじゃー、まー。記念撮影といきますか」 そう言って香藤を挟むように2人で顔を並べ、自分達をパシャリと撮る。 携帯の画面を確かめると、笑顔の自分と宮坂、赤い首輪をして怒った顔の香藤が しっかり写っていた。 「コラ!小野塚!!変なもん撮ってんじゃねーよ。さっさと消せって」 暴れる香藤を横目に手早く携帯を操作する。 「岩城さんに送信っ、と」 「送んな、バカ。止めろっ。――あ〜っ!!」 香藤の目前で送信ボタンが押され、メールが相手に送られたという文字が躍った 。 「―――っ。お前ら、ホントいい加減にしろ―っ!!」 「うわ〜。香藤が怒ったー(笑)」 「やべっ、逃げろっ!」 本気で怒り出した香藤を放り出し、2人は控え室を飛び出した。もちろん小野塚 は仕掛けた物を持ち出すことも忘れずに。 「くそ―っ!もう来んな」 叫びながら側にあったティッシュの箱をドアに投げつける。それでも収まらずに 、床をガシガシと踏みつけた。 そんな香藤の前でドアが再び開き、小野塚がひょいと顔を覗かせる。 「小野塚っ!まだなんかあんのかっ!?」 「そうそう、言い忘れてたわ。岩城さんから伝言〜。今日8時には家に居てくれ ってさ」 「は?なんだよ、それ」 香藤は怪訝そうに小野塚を睨みつけた。だが小野塚はその視線をあっさりと受け 流す。 「知らねーよ。俺に聞くなっつーの。とにかく帰っときゃいいじゃん。じゃな」 パタリとドアが閉じられる。 「あーもー!なんなんだよ、アイツらも岩城さんも〜!!」 漏れ聞こえる香藤の雄叫びを、吠えてる吠えてると笑いながら聞いた。 本当は、ちゃんと自分からだと言って渡しても良かった。だがタイミングよく岩 城から伝言を預かり、これを利用しない手はないとばかりに仕掛けたのだ。 早くしろよー、と促す宮坂の方へ歩きながら、イタズラの成果に大満足の笑みを 浮かべた。 そして手にしたビデオカメラに視線を落とし、次はどうやって香藤をからかって やろうかと、思いを巡らせるのだった。 2006. 6. 玖美 |
サイト5周年のお祝いにいただきました〜☆
この悪友3人組の話は個人的に大好物なので嬉しいです〜v
特に小野塚くんに弄られる香藤くんがツボです!(^O^)
・・・でも首輪をした香藤くん・・・・きゃあんv
玖美さん、楽しくて素敵なお話ありがとうございます!
香藤くんフォロー話も書いて下さるとのこと、楽しみにしていますわ〜vvvv
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