ふと よぎるあいつの言葉

「欲しい?」

それはどんなときでも一瞬にして俺を熱くさせる

身体の中のもう一人の俺が目覚める時・・・・





「・・・・城さん・・・・岩城さん!」
はっと顔を上げると プロデューサーをはじめスタッフの目が集まっていた
「あ、はい」
「どうしたんですか? ぼーっとしちゃって・・・・」
共演の女優からも声をかけられる
「あ、すみません・・・」
「具合が悪いのなら・・・」
と、気を遣ってくれるスタッフに笑いながら『なんでもない』を繰り返し・・・・
みんなは苦笑しながらも、また空気は元に戻っていった
その様子にほっとして・・・・・俺も目を手にした台本の中のその言葉へと落とした



そう・・・・・あれは昨夜のこと



「も・・・・・もっ、やめないか・・・・香・・・藤・・・・」
「なんで?・・・・ほら、岩城さんだってこんなに・・・・・もう我慢出来ないんだよね?」
下から見上げるあいつの顔は憎らしいほど余裕で・・・・
近頃めっきり力をつけた事に自信を持っている香藤はぎりぎりの所で俺の腰を支える
触れそうで触れない・・・・その感覚がたまらなかった

「ねえ? 言って・・・・欲しいって・・・・・ね、岩城さん・・・」
息を弾ませる俺に笑いかける香藤を睨み付ける
いつからこいつはこんなに・・・・・
「ああっ・・・」
香藤のモノがあたると、もう何も考えられなくなる・・・・
「ねえ・・・・・欲しい? 欲しいんでしょ? 岩城さん・・・・」
何度も何度も繰り返される言葉に頭の中まで真っ白になる
俺を変える言葉・・・・・こいつだけが言える言葉

そう・・・・・・欲しい・・・・・身体だけでなく、そのすべてを・・・・


何度となく繰り返されるそれに翻弄され、泣いて・・・・我を忘れた・・・
「欲しい・・・・・お願いだから・・・・香藤・・・・・」
その言葉に満足したのか、ゆっくりとゆっくりと香藤は俺の中に入ってきた・・・・
すべてが変わる瞬間
生まれ変わる瞬間・・・・・




活字を追う俺の目にとまったその言葉
「俺が欲しいか?」
勿論、これは普通の恋愛ドラマで、男から女への言葉で、あの場面でも何でもないシーンでの台詞

でももう見た瞬間に捉えられてしまった・・・・・
いつからこんなに変わってしまったのだろう・・・・
いつからこんなに・・・・



交わされる言葉を受け流しながら・・・・
そして身体の奥でくすぶりだした熱を持てあましながら・・・・・
俺はまた夜を待つ

あの腕に抱かれる愛しい瞬間を・・・・

2003・7・1
 舞