in the rain
| 「おっ」 雨の日の部室、忘れ物を取りに来た忍足はドアを開けてつい小さな声を上げてしまった。 部室の真ん中、いくつか置かれている長椅子の1つに横たわる跡部がいたからだ。 忍足はその姿をしばし見つめ・・・音を立てないように後ろ手にドアを閉めた。 そしてノブの中心のボタンを押す。 カチャ・・・ 予想よりも大きな音を立てたそれを雨音は隠さなかった。 ・・・やばっ・・・ 忍足は肩をすくめる。しかし、跡部に動きはない。 ・・・起きんかったんか・・・ そっと足音を立てずに近づく。 両手を頭の後ろに組んで仰向けに寝ている顔をのぞき込んだ。 開けばきつい視線を送る瞳も今は長いまつげに閉ざされていて穏やかだ。 自分達と変わらない、いやそれ以上に練習し、陽に当たっているはずなのに 何故か白い肌。 鑑賞すればするほど溜息が出てくる。 夏服のシャツに隠された肌の感触を忘れてはいない。あれからもう何ヶ月も過ぎたのに いまだにそのぬくもりが手のひらに残っていて・・・。 見た目の白い肌の印象からは想像出来ないほどの熱いもの・・・・彼の身体は熱かった。 忍足はふと目を閉じて思い出す。 それはほんの戯れに過ぎなかった。 最近味を覚えたアルコールに身を任せた夜。 以前から触れたい、触ってみたい・・・そう思い続けた彼の肌にじゃれて触って・・・そしてキスをした。 巫山戯ながら交わす口づけが次第に深いものとなっていくのに時間はかからなかった。 もうそうなってしまえば夢中だ。 堰を切ったように服をまくり上げて身体中に唇を落とす。 そんな自分の真剣さとは裏腹に、彼はまだ遊びの延長のように笑っていた。 ふわふわするな・・・・とか いい気持ちだ・・・・とか言いながら笑っていた。 しかし・・・・自分の胸を滑り降りた手が下肢へと伸びた瞬間に、息を詰めた彼が自分の上にのしかかる身体を押しのけた。 「やめろ!」 そう一言叫んで・・・。 その声で酔いは覚め、彼もまた息を弾ませながら立ち上がり走っていった・・・。 まだ桜の花びらが舞う頃、彼の庭での出来事。 あれからどうなったかというと特に変わったことはなかった。少なくとも彼との関係は。 翌朝朝練で顔を合わせても、いつも通りまっすぐに見つめてくる目にこちらの方がいたたまれなくなった。 交わされる会話もいつもと同じ。 でも自分は違う。彼の顔を見るたびにあの肌の感触がよみがえる。 そう変わったのは自分の中の想い。 興味本位でもなく、遊びでもない・・・・真剣な想い。 愛しげに顔を見下ろす。 自分だけのもにしたい! 触れたい! もう見ているだけでは物足りない自分がいる。 触るだけでは、触れるだけでは満足出来ない自分が。 もっともっと彼を感じたい、それは手でも唇でもなく・・・・。 忍足は椅子の両側に手をつく。 「景悟・・・」 小さく呟く。 誘うように息を吐く唇に近づいた・・・ 「何、泥棒みたいなことしてんだ!」 後少しで、というところで、ぱっと目が開き、忍足を睨み付けてきた。 「わあああ、起きてたんか!」 「おまえが入ってきた時から起きてんだよ」 「なんや人が悪いなあ。ずっと寝たふりしてたんかい」 笑いながら、ぐっと顔を近づける。 「おい、顔を寄せるな。起きあがれないだろう」 「起きんでもいいやん」 膝を床について、肘を椅子に乗せる・・・腕で跡部の顔を抱き込むような形になった。 「忍足、巫山戯るのもいい加減に」 「俺、マジやで」 ぐっと睨んでくる視線を受け止めて微笑む。 「なあ、なんで俺ばっかりなん? 景ちゃんは? 触りたない?」 「ねえよ、馬鹿が! 勝手に盛るな!」 「なんでかなあ〜。なあ、もっと熱く感じようや」 「お前いい加減にしろ」 ばっと殴ろうとする拳を押さえ込む。 「っつ・・・」 「人間素直にならんとあかんて」 「俺は充分素直だ!」 「もう景ちゃんは・・・・ほんまに意地っ張りやな」 「んっ」 反論しようとした唇を塞いだ。開きかけていたそれに舌を忍ばせると跡部は苦しそうに眉を寄せる。 足をばたつかせたが押さえ込んでいる上半身は動かない。 ・・・そんな表情、反則やで・・・ 間近で見せられる顔を堪能しながらより深く口づける。 「や、やめ・・・っ」 顔をそむけ、息を弾ませる唇をまた捕らえた。 ・・・もう待てんからな・・・ 自分のすべてを受け取るまで、この溢れるものを注ぎ込むまでは。 今まで押さえ込んできたものが、寝顔とその後の会話で零れだしてしまった。 この激しい雨音が包み込んでいる部室で触れてしまった・・・・もう止められない。 |
2003・6・19
日生 舞
★いつもお世話になっている
あずま ゆみ様に差し上げるために書いた初忍跡です・・・・・
なんとも中途半端なもので・・・・申し訳ない気も;;;