Planetai



3000万光年の彼方。
千古の神秘を秘めて、ゆっくりと吐息のように輝くガス状星雲、一角獣座。
21世紀の地球上の人間には、この一角獣座が、どのくらい遠い過去の星なのか
想像もつかいない。
この一角獣座のガス状星雲の中に、潤んだように美しく輝く2つの星が見える。
「地球」「19世紀」「20世紀」「21世紀」・・・いくつかのキーワードに
導かれて、美しく輝く2つの星が今、3000万光年の彼方から、21世紀の地球上、
最も美しい二人の男たちにフォーカスされているのだ。
真夏のとある夜、とある場所を見つめている2つの美しい星。それは美しく輝く一角獣座の
ガス星雲たちの過去なのか・・・未来なのか・・・。

・・・一角獣座ガス星雲の2つの光が、厚く張り詰めた雲の下にやってきた。
雲の隙き間から、美しい二人の男たちの語らいが聞こえる・・・。

「七夕」という「日本」の「歳時記」の各々の思い出を語りあう若い美しい男二人が見える。
「子供」という時代の「七夕」の思い出を語る美しい恋人たち。
一角獣座の美しいガス星雲の2つの光は、美しい恋人たちを旧知の仲間のように
眺めながら、互いに囁きあうようにゆっくりと点滅を繰り返していた。



「やっぱり東京じゃあ綺麗な星空は望めないね・・・・」
ビールの缶を片手に香籐が溜息をつく。
「そうだな・・・・街の光も強いしな」
そう答えながら岩城は静かな、そしてすがすがしい風に身を任せる。





とある場所の「バルコニー」での光景・・・。
金髪の男「香藤」が、「七夕」という「歳時記」に使う「笹」という道具を取る
のに苦労をした話を、身ぶり手ぶりで黒髪の男「岩城」に話している。
「岩城」が、その話を聞きながら高らかに笑っている。
どうやら「21世紀」の自分たちは幸せそうに過ごしているらしいことを2つの星は確認したようだ。



そうやって世間話をしながら、二人は、星のあまり見えない空を眺めていた。
「・・・・・今年は」
「え?」
話が途切れたあと、呟くように香籐が言う。
「七夕飾ろうっか、岩城さん!」




星のあまり見えない空を眺めている「21世紀」の「香藤」と「岩城」には、
3000万光年から来た2つの星の姿はもちろん見えない。

「笹」に「短冊」というものを飾ろうか・・・と「香藤」が提案している。「短冊」には
「願いごと」を書くのが、この時代、この場所の「慣習」らしい。
「短冊」を手にして「願いごと」を書こうとした「香藤」が、突然「岩城」の額にキスをした。
「岩城」がびっくりして顔を赤く染めてうつむいている。
「香籐」が満面の笑顔で「岩城」を見つめると、二人を眺めていた2つの星が、
語らうように交互に輝きあった。



「じゃーん! 書きました!」
香藤が、自慢気に見せた紙には・・・・・

【岩城さんといつまでも一緒に過ごせますようにv】


案の定、岩城が照れ笑いをするしか反応出来ないモノを書いている。
すると今度は、岩城さんは?と覗き込んでくる。
「俺のは明日までの秘密だ」




「21世紀」の「岩城」と「香藤」を観察している一角獣座のガス星雲の2つの星たちにも
特徴がある。
ほとんど同じ様に見える2つの星だが、よく見ると、一つは、ゆっくり呼吸をす
るように輝く星で、もう一つは、力強くリズムを刻みながら光り輝く星だ。時折、力強くリズム
を刻む星が、ゆっくり呼吸をするように輝く星の周りを楽しそうに回っている。
「21世紀」の「岩城」と「香藤」にも共通のエレメントが継承されているようだ。



「ね、岩城さん・・・・・」
短冊をそれぞれにしまうと、香籐が肩に手をかけてきた。
どちらかともなく唇を求めると、もう互いの熱しか伝わってこない。
「ん・・・・・・っ」
息をするのもきつくなるほどの熱い口づけに酔う・・・・・。
どさっ・・・とベッドの上に重なって、倒れ込んでもなお唇を求め続ける。
「岩城さん・・・・・」
ようやく解放され、呼びかけに目を開けると、香籐が見下ろしていた。
「俺たち・・・・幸せだね」
そう言うとにっこり笑った。




「21世紀」の「岩城」と「香藤」を眺めながら、2つの美しい星は、さらにキーワードを広げて
他の次元の自分たちを観察しようとする。
キーワード・・・「七夕」「織姫と彦星」・・・。
すると、今度は「21世紀」よりも少し前の次空間にいる「岩城」と「香藤」が確認できた。
二人は、星座になっていた。あまりも深く愛しあう二人を妬んだ神ゼウスによって、
「岩城」と「香藤」が夜空の天の川近く、川を隔てた所に星座にされていたのだ。

「織姫」となった「岩城」は、「彦星」となった「香藤」に会えない悲しみで、
泣きながら毎日を送っていた。皮肉なことに「岩城」の悲しみの涙が天の川に流れる度に、
天の川の星々が、さらに美しく輝きを放っていった。
そんな「岩城」を向こう岸で見つめながら歯ぎしりする「香藤」は、
「岩城さんに会いたい!!星の河を泳いでも渡るのだ!」
と、周りの星座たちが引き止めるのも聞かずに、何度も天の川に飛び込んだが、
ゼウスの魔力によって押し戻されていた。

愛しあう二人なのに、お互いの存在をすぐそこに感じながらも、決して触れあう
ことが叶わない惨い仕打ちには、さすがに他の星座や神々も涙していた。
ただし1年に3回、直接会うことが許される日があった。
それは「七夕」の「7月7日」、そして「岩城」の誕生日の「1月27日」と「香藤」の誕生日の
「6月9日」の晴天の時だけだった。
お許しの日が天気になると、二人は日付が変わったとたんに天の川に飛び込んだ。
「岩城さん!!!岩城さん!!!・・・ああ、逢いたかった・・・!!」
ざわざわと天の川の星屑を掻き分けながら、香藤が岩城めがけて、まっすぐに進んでいく。
刻々と近付く香藤の姿が現実のものとわかると、岩城の目は、嬉し涙でいっぱい
になる。そして感極まった掠れた声でようやく愛しい名を呼ぶのだった。
「香藤・・・!!」
中州で抱き合う二人は、頬ずりをしながら熱い抱擁でお互いの体温を確認しあう。
そして、しばらく見つめあったのちに、息ができない程の熱い口づけを交わす。
二人の逢瀬場所は、天の川の下に用意された星屑の絨毯の上だった。
「今日は、ずっと岩城さんの中にいさせて・・・」
香藤が甘えて岩城に囁くと、岩城は頬を染めながら吐息を漏らす。
「ああ、香藤・・・!!お前で俺をいっぱいにしてくれ。次に逢えるときまでお前の体温
を忘れないように・・・」
そうして二人は、日付が変わるぎりぎり近くまで、ひとつに繋がって過ごした。
この日が晴天になれば、ゼウスの魔力で天の川を渡るときに押し戻されることはなかった。
晴天であれば毎回決って行われる二人の逢瀬は、周りの星座たちや神々をも幸福にさせた。

そして・・・熱い逢瀬の後には、悲しい別れの時間が近付いてくるのだ。日付が変わる瞬間まで、
二人は熱い抱擁と口づけを絶やさなかった。

お許しの日が悪天候となると、それは地獄の思いだった。
「岩城」は、天の川の川岸に立ち、「香藤」の名を泣きながら切なく叫び続けた。
自分の名を切なく呼びながら涙する「岩城」の声を聞くと、「香藤」は、無駄と
分かっていても、天の川に入り込んでは、押し戻される行為を何度も繰り返した。

2つの美しい星は、ゼウスの毒牙にさらされた「ある時代」の自分達の「未来」を観て、
うるうると震えるように光った。

堪らず、2つの星は、次のキーワードを入れる・・・「1月27日」。
・・・そこは「明治4年」という時代の「日本」だった。
木立に雪が降りしきる様子が見える。
一面の雪景色の中で、二人の美しい男たちが重なるようにして横たわり、辺りには、
赤い花びらが散っている。
動く様子もない二人の美しい男たちが、積雪の中で幸せそうに横たわって見えるのは
気のせいだろうか。
愛し合う二人は、今生の苦しみから解放された今、ようやく、次の新たな生命の息吹を
見つけるために、旅立ちをしたのであった。
横たわる男たちの魂が、二人の身体から抜けて宙に浮かんだとき、2つの星は、
穏やかに光輝きながら、互いの分身である美しい男たちの魂を包み込みながら、次の
次元に導いていくのであった。

そして2つの星は、再び、幸せそうに暮らす「21世紀」の自分たちを再びフォーカスする。

キーワード・・・「6月9日」。
「香藤」にとっての「誕生日」の「在るべき過ごし方」は、「岩城」自身がプレゼントになること。
この日ばかりは「香藤」の「わがまま」に応える「岩城」である。ただ愛しあう二人の美しい姿が
目に眩しい。
それを観ていた2つの星のうちの、力強くリズムを刻む星が、ゆっくりと光る星の周りを
ぐるぐると廻っている。やがて2つの星が重なりあうと、大きく閃光した。

再び、キーワード・・・「1月27日」。
沢山の贈り物を前に、「香藤」が「岩城」に叱られている。
「岩城」が本当に欲しいものは、「モノ」や「お金」ではなく、「時間」や「空間」を「香藤」と
共有すること。
すると、「香藤」が叫んだ。
「これみんなペアもののアクセサリーなんだっ。 岩城さんにはただ金を遣った
だけの、からっぽのプレゼントに見えるかもしれないけどっ。また1年、仕事がどんなに
忙しくても、絶対、岩城さんのそばにいるよって・・・そんな俺の気持ちの表れなのにっ・・・!!」
その言葉に「岩城」は満たされていく。
ペアもののアクセサリーは、二人の愛の証し。
「21世紀」では「男同士」は「結婚」ができないらしいが、きっとそんな「決まりごと」など、
二人の前では色褪せてしまうことだろう。

そしてもう一度・・・2つの星は、雲の隙き間から「21世紀」の先ほどの「七夕」にやって来た。



その夜、笹を持って帰って来た香籐は岩城の短冊を見て一喜一憂していた。
本当にかわいい奴だとその様子を見ながら、岩城は珈琲を入れたカップに口を付けた。


短冊が風に揺れる・・・・・・

【香籐に馬鹿と言うことが少しでも少なくなりますように】

そして・・・・・・

【これからも星の河をいつまでも ふたりで渡っていけますように・・・・・・】




どんな困難に見舞われても、自分のパートナーは、どの時代も「岩城」であり
「香藤」でしかなかった。2つの星は、自分達の来世を思い、微笑んだ。3000万光年の
彼方からやってきた2つの星は、自分たちの魂が、何度生死を繰り返しながらも未来永劫、
お互いしかパートナーにはなり得ないことを知り、安心しながら重なり合って輝いた。

今日も、宇宙から見える青く美しく輝く地球は、惑星の中でも一際美しく、その
存在を誇張している。
宇宙は、千古の昔から知っている。
この地球には、美しい二人の男たちが過去、未来に渡って、愛しあっていることを。

2005.1.25 ゆにこ


(Fin)

※ギリシア語Planetaiは、Planet(惑星)の語源で「さまよう人」という意。







☆もう1年半前に書いていた「星の河をこえて・・・」を
ゆにこさんがこういう形でまた蘇らせてくれました
私にとっては当時勢いだけで書いた恥ずかしい代物なんですが
(以前はしばらく同盟の方へ掲載していました)
とっても感動したと言ってくださって・・・
そして生まれたのがこのお話だそうです
とても美しいお話です(o^^o)
長い時を経て岩城さんと香藤くんが巡り会い別れて・・・そしてまた出会う
それを星々は遠いところからいつの時代も見つめてきた・・・
とても壮大なスケールでふたりの愛が描かれています
七夕の話なのですが星は変わりなく天空にあるので今の季節でも違和感はないと思います
ゆにこさん素敵なお話ありがとうございました
ちなみに壁紙は”夏の星座”です・・・・