バレンタインの風景2

「じゃ、お先〜!」
部活が終わって急いで着替えていた菊丸が声をあげる。
「早いッスね。」
まだ汗を拭っていたリョーマは頭からタオルを掛けたままで声をかける。
「へへへ、用事があるんだよ、今日は!」
「それって・・・もしかして・・・・デートっすか?」
バレンタインだ、それもあり得る。
興味津々に桃城が顔を向ける。
「内緒!」
「あ〜あやしい!あやしいっすよ、先輩!」
「じゃあな!」
尚も聞き出そうとする桃城を押しのけて菊丸はドアを開ける。
「大石!」
「ん?」
「今日の所、反省しておかないとな。」
「ああ、そうだな。」
大石が答える。菊丸がにっこり笑った、そして出ていく。
「本当にデートかも・・・・・大石先輩、何か聞いてますか?」
「いや、別に。」
特に興味もない風に答えて、鞄を持つ。
「じゃあ俺は帰るから、桃、戸締まり頼んだぞ。」
「あ、はい。」
淡々と出ていく大石を見送る。
「なあ、越前、お前どう思う?」
「別に・・・・興味ないッスよ。」
「なんだあ〜お前、若くないぞ!」
バンと背中を叩かれて、咳き込むリョーマだった。




「よ、早かったな。」
大石はコンテナの上の菊丸を見上げる。
「そりゃあ、大急ぎで走ってきたからね。おかげで息が切れちゃって大変。早く上がってきてよ!」
「ああ。」

「えへへ。」
よっと、鞄を置く大石を見ながら菊丸が手にした紙袋から包みを取り出す。
「ほいっ、俺の気持ち。」
「・・・・ありがとう。」
「なんか照れるな、こういうの。」
「そ、そうだな。」
包みを前に2人で照れ隠しに笑う。
「やっぱ大石だね、此処にちゃんと来てくれるって信じてたけど。」
「分からないわけないだろ・・・・俺とお前の仲で。」
「うん!」
嬉しそうに菊丸が笑う。
その笑顔を見て大石が微笑む。
「これ・・・・・ありがとう。手作りしたんだな。」
「姉ちゃんの持っているお菓子の本を盗み見してさ・・・・大変だったんだ;;」
「そうか。」
「見た目は不格好だけど、味は大丈夫!」
「そうだな・・・お前は器用だから、心配してないよ。」
「大石・・・」
「じゃあ、俺からもお返し。」
「ん?」
「英二、目を瞑って・・・・。」
「あ・・・・うん。」
少し照れながら菊丸が目を閉じる。
「ありがとう・・・・英二。」
そっと耳元で呟きながら、そのぬくもりを落として・・・・。


コンテナの上の二つの影はいつまでも寄り添っていた。