| 【jaloux】 〜Glay〜 ――こっちに来てわかったんだけど、 感情が顔に出ない人が多いんだよね。 いつだったか、アレクが言っていた。 ――ずーっと見てると解る。 解るとこっちも嬉しくなる。 ずっと、一緒にいれば・・って。 どのくらい一緒にいれば解るのだろう・・・? そりゃあ、少しは解るようにはなったさ。 眼鏡の奥に、涼やかに象るその目元がふと緩んだとき。 キスの直前、困ったようにほんの少し潤んだとき。 彼がどんな気持ちなのか・・・ それくらいは、まだ想いを通わせてから日の浅い私にも、 解るようになった。 けれど。 もっともっと、俊也を深く知りたい―― 君が、いつも何を考えているのか。 私をどう思っているのか・・・。 いつも口に出しているのは私の方だけじゃないか?? 〜toshiya〜 近頃、議事堂の正門を潜る足が重い・・・。 なぜなら。 自分さえ気づかぬうちに、視線が彼を追ってしまうから。 スラリとした長身に、首筋に流れる金髪、 厚くたくましい胸、太く力強い腕。 それは、いつも、闇に紛れて私を翻弄させる体躯(もの)で・・・ 彼を視線で追ってしまった後には、必ず頬が、体が火照るから。 隣を歩く宮沢さんに気取られぬようにするのに、 どれほど私が緊張しているか・・。 正門を潜ると、外警の門番が、身分証明の提示を求めてくる。 お互い顔は見知ってはいるが、規則なので一応。 「ご苦労様です。」 頭を垂れながら重厚な門を開く二人に、軽く会釈を返して、 議事堂中庭へと足を踏み入れた。 すると、噴水脇で、談笑している二人組み。 一人は外警班員・・もう一人は――よく見知った顔だった・・・。 幸い、宮沢さんは、気づかなかったようで、足早に議事堂内に入っていった。 私は・・・視界の端に入ってきた、「二人組み」の親密そうな様子が、 頭にこびりついて離れなかった。 〜Glay〜 俊也が、宮沢氏と連れ立って、外門で身分証明をしてることは知っていた。 だから、態と直ぐ傍に居た本木を呼び寄せた。 『Hi、本木、英語は少しは上達したかい?』 少しブロークンな英語で話し掛ける。 『ひどいっすよ。グレイさん。これでも毎日勉強してるんスよっ!』 噛み付くような勢いで反論してきた英語は、 なるほど、初めて出合った時よりは上達している。 『へ〜、上手くなったじゃないか。一体、誰に教わってるの?』 内緒話をするように、本木の腰を引き寄せて、耳元に囁く。 ――もちろん、一部始終を、俊也に見られていることを承知で。 『誰だっていいでしょうっ!?仕事に戻りまっすっ!!』 本木は、私の言葉に、誰を思い浮かべたのか、微かに頬を赤らめて、 軽い身のこなしであっという間に遠ざかってしまった。 あーあ・・と、その俊足の後姿を見送ってから、 ゆっくりと振り返る。 其処にはもう、俊也の姿はなかった。 〜toshiya〜 ――あれは・・確か、外警の本木・・・。 まだ、全隊員の顔と名前の一致しない私は、 必死に、脳内のDBから、グレイと親しそうに話していた青年の名前を検索する。 一体、何の話をしていたのだろう・・? 一瞬そんな考えが頭を過ぎった。 ・・いけない。仕事中だ・・ 頭を振ると、小さな嫉妬心は瑣末事として私の脳裏から吐き捨てられた。 ロビー中央の天井から吊り下げられた大きなシャンデリアを見上げながら、 宮沢さんは苦苦しく息を吐き出した。 「シャンデリアの点検はきちんとしているのか?」 通りすがりの整備班員を捕まえて、眉間の皺を一段と深める。 宮沢さんに突然声を掛けられて固まってしまった整備班員を気の毒に思い、 ”今日は監査ではないのだから・・”と助け舟を出そうと思って振り返った先に見た光景に、 気を逸らされてしまった。 「宮沢さん、」と声を掛けようとした先に、見えた光景―― ロビーを抜けた廊下の一角に、 グレイと、眼鏡を掛けた若い青年の顔が見える。 ・・・コンピューター班の野田君だ。 グレイの指が、一瞬、野田君の髪に触れた。 野田君はなにやらはにかみながら、グレイを見上げている。 どうやら、二人は、これから中庭に出るらしく、こちらに向かって歩いてくる。 私の神経は、もはや、 固まった整備班員といつまでもしつこく説教を続けている宮沢さんではなく、 私たちのすぐ背中越しを通りすぎていく、二人に向けられていた。 『Thanx.ヨシミ、助かったよ。』 『いえ、お役にたててよかったです。』 ――ヨシミ・・? グレイは彼のことを普段ファーストネームで呼んでいるのだろうか・・? 〜Glay〜 野田をファーストネームで呼ぶのは、理由がある。 隊員の中で、”野田”姓を持つのは、3人。 ややこしいじゃないか。 ミスター野田または、野田コンピューター班長、 それから、ミセス野田、または野田室管理副班長、 そして、野田隊員―― だから、私は野田のことを、”ヨシヤ”と呼んでいる。 尤も、いつだったか本木がそう呼んでいるのを聞いてしまって 初めて彼のファーストネームを知ったのだけれど・・・。 ”ヨシミ”と、そう、私が口にした時、 俊也の背中が微かに強張ったのが、見間違いではなければいいのだけれど・・・。 〜toshiya〜 ――何かがおかしい・・。 先刻のグレイの様子。 何か、怒っているのだろうか?私が彼に、何かしたのだろうか? 石川隊長への用事を済ませて、 私は宮沢さんの後を追いながら考え込んでいた。 不意に、ドンという衝撃とともに、 手にしていた書類を見事に床へと落としてしまう。 散らばった書類をかき集めながら、見上げると、 『Excuse me』 綺麗な発音を唇に載せ、 床に散らばった書類を一纏めに渡してくれたのは、グレイだった。 「何してるんだ。江角」 先を歩いていた宮沢さんが振り返る。 「申し訳ありません。すぐ行きます。」 と返して・・ 『No problem・・』 と俯きがちにグレイに答えると、グレイは私の手に書類を持たせてにっこり微笑んだ。 書類の上には、小さな紙片。 ”PM8:00、HOTEL New Otani 『La Tour Dargent』” ニューオータニの『トゥールダルジャン』 待ち合わせの場所が書かれていた。 〜Glay〜 「シャトー・パルメ」の、舌に広がるタンニンの味を噛み締めながら、 目の前に座る俊也を見つめる。 俊也は私の視線に気づくと、 濃厚な色の赤ワインを口に含んだまま、ふわりと微笑んだ。 『美味しいですね。――夜景も、綺麗だし。』 『そうだね。でも、君のほうがもっと綺麗だ。 パルメよりも君を早く味わいたいよ。』 日本人には、この手の睦言には照れが先走るらしく、 俊也の顔も、パルメに負けず劣らずの赤い色に変わった。 『――部屋は予約してあるんだ。行こう・・?』 肩に手を置いて促せば、赤い顔をしながらも俯いて従ってくれる。 それから、部屋の扉を潜るまでは、ずっと俯いたままだ。 そんなシャイなところさえも、素敵過ぎるのだけれど。 〜toshiya〜 ベルボーイが去った後、 ほろ酔いの私を、背後からグレイの腕が抱きしめてきた。 『ずいぶんと性急なんですね・・・何か、あったのですか?』 少し強張ってしまった肩を、悟られないように 私はゆっくりとグレイの腕の中で、グレイの顔を見上げるように体勢を変えた。 『今日、議事堂に来たのは何故?』 『9月の人事編成について、石川隊長にご相談があったので・・』 グレイの胸に抱きこまれながら、ゆっくりと答える。 『私の質問には答えてくれないのですか? 今日の、貴方、変でした。』 『――変?』 肩眉を上げてグレイは私を見下ろした。 『ええ。今も・・議事堂でも・・ あんな風に私に見せつけるように・・・』 ――私以外のヒトに、私にするように接するなんて・・・ 続けようとした言葉は、 グレイの唇に飲みこまれた。 「・・・・んっ・・・」 「ヤキモチ・・?」 唇が離された後、 カタコトの日本語で、グレイが嬉しそうに目を細めた。 ――ああ・・そうか。 コノヒトは、私に嫉妬をして欲しかったのだろう。 ――仕方のないヒトですね・・・―― 「いえ、違います。」 ゆっくりと答えると、グレイの表情が曇った。 ・・嘘です。 妬きました。 私の髪に触れるその指で、 私以外のヒトの髪を触って・・・ 私に囁くその唇を、 私以外のヒトの耳朶に近づけた・・・。 でも、これは罰です。 そんな方法でしか、私を試す事のできない貴方への――。 『嫉妬なんか、していませんよ。』 『嫉妬してくれないの? 俊也は、私が俊也以外の人間にあんな風に接しても、 少しも動揺しないの・・・?』 『・・・嫉妬はしませんでしたけれど、 不安にはなりましたよ。 私が、貴方に対して、何か不快な想いをさせたのではないか・・って。』 『・・?どうして、そんな風に想うの?』 『だって、私以外のヒトにあんな風に接する貴方を見ていたら、 私に対するあてつけにしか見えないでしょう? ――私は、貴方を信じているんですから・・・』 『私を・・信じてる?』 『ええ。信じています。 貴方の想いの全ては、私のココにあるから・・・』 私は、私の左胸に掌を当てて、微笑んで見せた。 『ごめんね。俊也・・ 君を試すような事をして・・・』 うなだれてしまったグレイの首に腕を回して・・・ 「――本当に、しょうがないヒトですね。」 日本語で囁きながら、今度は私から唇を寄せた。 END |
| ★GDです! らん様のサイトでリクエストを受け付けておられていたので書いていただいたのですが・・・・・ グレイ×江角です!きゃあああ〜きゃああ〜(落ち着け!) もう素敵すぎです。 リクエストは「八方美人のグレイとそれにやきもちする江角」だったのです。江角は精神的には姉さん女房ではないかと思ったのでそれをお願いしました〜。本当にありがとうございます、こんな素敵なお話ができあがるなんて・・・・感動です。 こちらの話には続きがあります。それは裏部屋に置いてあるのでそちらでどうぞvv(・・・・こちらも素晴らしいです!) らん様、本当にありがとうございます。大切にいたします〜(^o^)。 こんな素敵なお話満載のらん様のサイトへはリンク部屋よりどうぞv |