be confident


2月の最終登校日。

昇降口に向かう不二は後ろから大きな声を掛けられた。

「不二ぃ〜。おっはよー。」

振り向くと菊丸が手を振りながら駆け寄ってきた。

「英二おはよう。」

隣に並びかけてきた菊丸に不二はにっこり笑った。

「昨日まであったかかったのにさ。今朝はちょっと寒いね。」

そう言いながらずれてしまったマフラーを直す菊丸の頬は赤くなっていた。

「英二ほっぺた赤くなってる。」

不二がそっとその頬を撫でると一層赤味が増した。

「そ、そう?ずっと走ってきたからかな。」

誤魔化すように頬を擦る菊丸が可愛くて不二はクスクス笑う。

「むー、笑うなよー。それよりなんか今日やたら視線を感じんだけど。」

「そうだね。」

「なんだろね。」

その答えは下駄箱に辿り着いた時分かった。

不二の下駄箱いっぱいに可愛らしいラッピングの包みが入っていた。

「あっそうか。明後日不二の誕生日だもんね。それで女の子たちが見てたんだ。それにしても凄いねこれ。どうすんの?」

「うん、大丈夫。」

菊丸の心配をよそに不二は鞄から紙袋を取り出すとプレゼントを入れた。

「なんだよー。準備いいじゃん。もしかして貰う気満々だったわけ?」

「違うよ。姉さんが持たせてくれたんだ。」

不二は菊丸の嫌味をさらりと受け流す。

教室に向かう途中にも「不二先輩お誕生日おめでとうございます。」「不二君誕生日おめでとう。」などの声とともに数個のプレゼントが手渡され紙袋に収まった。

「おっはよー。」

「おはよう。」

二人が教室に入ると皆の視線が一斉に集まる。

そしてその視線はそのまま不二の机に移動した。

そこにはまたプレゼントが山のように積まれていた。

「うわ〜凄い。不二モテモテじゃん。」

「そんな事ないよ。英二の時だっていっぱい貰ってたじゃない。」

「そうかにゃ。ここまでじゃなかったと思うけど。」

菊丸は何やら不満げに頬を膨らませ天井を見つめる。

「こんな事にまで負けず嫌いなんだね英二は。」

「別にそんなんじゃないけどさー。でもこんだけあるとその袋でも入りきらないんじゃないの?」

菊丸が視線を戻すと不二は鞄から新たな紙袋を取り出したところだった。

「……」

「ん。どうかした?」

一瞬言葉を無くした菊丸に不二が訊ねる。

「ううん。なんでもにゃい。それもお姉さん?」

「うん、そうだよ。」

「なんか不二のお姉さんて抜かりないね。」

「まあね。」

その後も休み時間毎にプレゼントを持参する女生徒が現れ、帰る頃には不二の手には3つの紙袋があった。

二人は並んで帰宅の途につく。

「一つ持ってやるよ。」

菊丸はプレゼントが一杯に詰まって重そうな袋を不二の手から奪い取る。

「ありがとう。」

菊丸は飛び跳ねるようにして三歩ほど前に出るとくるりと振り向いた。

「やっぱ不二の方が人気あるよ。俺はこんなにいっぱい貰った覚えないもん。」

菊丸は拗ねたような顔を見せる。

「そんなに悔しい?」

「別に悔しいって訳じゃないけどさー。」

(ちぇー不二のヤツ全然俺の気持ち分かってない。)

不満顔のままの菊丸に不二は微笑む。

「僕はたくさん貰うより本当に欲しい人からひとつ貰える方が嬉しいけど英二は違うの?」

「……」

「そう言えば英二からはまだ貰ってないよね。」

「なんだよー。不二は本当に欲しい人から貰えればそれでいいんだろ?」

「そうだよ。」

不二にじっと見つめられ菊丸はたじろぐ。

「じゃっじゃあ俺なんかじゃなくてその人から貰えばいいじゃん。」

「僕は英二から貰いたいんだけどな。」

にっこり微笑まれ菊丸の顔が赤く染まる。

「しっ知らないよそんなの。お俺行くとこあるから。」

菊丸はプレゼントの詰まった袋を不二に押し付けるとあっという間に走り去っていった。

「クスッ。ホント可愛いよね英二は。」

残された不二は嬉しそうに呟いた。





そして日曜日、不二の誕生日当日。

午後になって不二の家に菊丸が訪ねて来た。

「いらっしゃい英二、どうぞ上がって。」

「いいよこれ持って来ただけだから。」

菊丸は小さな紙袋をずいっと差し出した。

「誕生日おめでと。」

中には綺麗にラッピングされた包みが入っていた。

「わざわざ持って来てくれたんだ?ありがとう。」

「だってやっぱこういうモンは当日に渡すほうがいいだろ。」

そっぽを向きながらそう言う菊丸の頬はうっすらと赤くなっていた。

「英二この後何か予定あるの?」

「別にないけど…。」

「じゃあやっぱり上がって行ってよ。」

不二は菊丸に返事をさせる暇もなく手を引いて強引に部屋に招き入れた。

「適当に座っててお茶持ってくるから。」

ぽつんと取り残された菊丸が部屋を見回すと先日の紙袋が3つとも手をつけた様子もないままで置かれていた。

「お待たせ。」

不二が紅茶とともに母の手作りのケーキを持って戻ってきた。

「美味しそう〜。いっただきま〜す。」

「どうぞ召し上がれ。」

パクパクと本当に美味しそうにケーキを食べる菊丸を不二は嬉しそうに見ていた。

ケーキを食べ終わり紅茶を飲んで一心地ついたところで紙袋を指差し菊丸が訊ねる。

「あれ、開けないのか?」

「うん、言っただろ。僕は本当に欲しい人からひとつ貰えればいいって。一番最初に開けるのはそれしようと思って。英二これ開けてもいい?」

不二が先程菊丸が渡した包みを手に訊ねる。

「ダッダメダメダメダメダメッ!」

菊丸がもの凄い勢いで否定する。

「どうして?」

「は恥ずかしいだろ。俺が帰るまで開けるのナシだかんな。」

菊丸は目を逸らし真っ赤になっている。

「う〜ん残念。凄く開けたいんだけどな〜。じゃあ代わりに今別のものをくれる?」

不二に顔を覘き込んでそう言われ菊丸は戸惑う。

「そんな事言われても俺他に何にも持って来てないし…。」

「大丈夫。僕の欲しいものは目の前にあるから。」

「へ?」

菊丸がきょとんとしていると不二の顔が近づいてきて唇が重ねられた。

「ごちそうさま。」

瞬時にして菊丸の顔がぼっと火を噴いたように首まで真っ赤に染まった。

不二はそんな菊丸の隣に移動し肩を抱き寄せる。

暫くしてされるままになっていた菊丸がボソッと言葉を漏らした。

「なあ不二、そう言えばお前お祝いで家族と出掛けたりしないのか?」

「ああ、それは夕方にしてもらったから大丈夫。」

その返事に菊丸が身体を離し顔を見つめてくる。

「どうして?」

不二は菊丸を見つめ返して答えた。

「英二が来てくれると思ったから。」

「……絶対俺が来るって自信満々だったのか?」

菊丸が再び顔を赤くして訊ねる。

その声には少々怒りが含まれていたが不二はまったく動じることなくにっこり笑った。

「来ただろ?それに金曜のあれはやきもちだったんだよね?」

何もかも見透かされ菊丸は悔し紛れに憎まれ口を利く。

「うぅ〜っ。お前ってばやなヤツー!!」

「英二は可愛いよ。」

「……」

またまた真っ赤になった菊丸は不二に抱き寄せられ元の体勢に戻った。



こうして甘い(?)恋人たちを包み込み2月最終日の午後は穏やかに過ぎていった。





END



                              04.3.2  グレペン



★拗ねているような菊ちゃんが可愛くって可愛くって(^o^)
不二はそんな菊ちゃんを見ながらを少し余裕で・・・v
とっても可愛くて、素敵なお話でした〜〜vvvv
不二の誕生日にと贈っていただいたものです
本当にありがとうございます♪