「なんだ、まだいたんですか」

扉を開けると同時に発せられた言葉に目を開けると先月入ったばかりの新人が立っていた。

「相変わらずの口のきき方だね」

不二は苦笑する。

「それはどうも」

この新人、先月入ってきたにもかかわらず、あっという間にNO.3に上がってきた。まだ手塚や不二とはかなり差はあるが、その成績には誰もが驚きを隠せなかった。

「まだ帰らないんですか」

ロッカーを開けながら振り向きもせず問いかけてくる背中を不二は見つめた。

「ちょっとね・・・」

「手塚さんならまだ店長と話し込んでいますから時間かかると思いますよ」

「そう」

それだけ答える。

「・・・・・・」

「何?」

「・・・・・否定しないんですね。」

「別に・・・・君だって答えは分かっていたんだろう?」

「・・・・まあ、そうですけど」

「なら良いじゃない。僕は隠すつもりはないからね。」

そうみんな知っている・・・・。

「自信・・・・ですか」

「そう見える?」

「・・・・・・」

ちらっと不二を振り返って、そしてまたロッカーの方を向いて着替えを始める。

「手塚さんは・・・・いや、いいや」

「越前?」

パタンッ、ロッカーの扉を閉めて振り返り不二を見る。

「俺・・・・ああいう人結構タイプかも」

「・・・・・」

「今日のネックレス、不二先輩ですよね?」

「何のこと?」

その言葉に、ふっと越前は笑った。

「ま、いいですけど・・・・じゃ、まだ誰も・・・・ってことですよね?」

挑戦的に口元を上げる様子に不二は目を細める。

「君にはまだ早すぎるよ・・・・色々とね」

「時間じゃないですよ、こんなことは・・・・と、今日は約束があるんでこれで」

早く手塚さん来ると良いですね、心にも思っていないことを口にし、気持ちだけ頭を下げた。



「時間が作り上げるものだってあるさ・・・・君は分からないだろうけどね」

出ていこうとする後ろ姿に投げかける。

ふと足が止まる・・・・だが・・・

「・・・・・失礼しまーす」

片手を挙げて扉を閉める。

足音が段々小さくなっていった。


「越前・・・・リョーマ・・・・・ね」

オーナーが何処からか引っ張ってきた男。

その小生意気な所も客には受けている。

年もキャリアも自分の方が上にもかかわらず、常に脅かされる存在。

そしてまた・・・・・


『じゃ、まだ誰も・・・』

リョーマの言葉が浮かんだ。

そう誰も分からない、掴めない手塚の気持ち。

何よりも欲しいもの。

英二はともかく大石は気づいている、店長も・・・・でもそれはいつもの気まぐれと思われているに違いない。
だから何も言わないし、話題に出そうともしない。

でも・・・・・。


「手塚・・・・」

その名を呼ぶ。

掴んでも掴んでも幻のように消えてしまう・・・・いつまで同じ事を繰り返すのか。

自分でも信じられないくらい余裕がなくなってくる・・・・。





「手塚・・・・」

もう一度呟く。

扉が開くの待ち続けながら・・・・・。