「ねえねえ、見た?」

ネクタイを外しながら菊丸が話しかけてきた。

「見たって、何を?」

パタン、ロッカーを閉めた不二が振り向く。

「此処だよ、此処、手塚の」

そう言いながら自分の首元を指す。

「・・・ああ、あれね」

「ビックリした〜俺。あの手塚だよ?」

「彼だってあれぐらいつけるよ。そんなに驚く事じゃない気もするけど」

「普通はね。でもあいつだよ? あんなに色々贈られておきながら、全然身につけなかったのにさ・・・・」

「色々って・・・・知ってるの?」

「あ? プレゼントの事? いや実際見た事ないんだけど・・・」

「噂だろう?」

「うん。でも絶対貰ってると思うんだ! 何たってうちのNo.1なんだし・・・・・って何?」

不二の顔を見て、菊丸が言葉を止める。

「何が?」

「・・・・何か機嫌悪そうだから。」

「僕が?・・・別に?」

不二は少しだけ笑う。

いつの間にか菊丸を少し睨みつけていたらしい。


その時扉が開いた。

「あ、大石! 」

「なんだ、まだ着替えていなかったのか」

「だってそれどころじゃないじゃん! 大石も気づいただろう?」

「気づいたって・・・・」

大石はふと不二を見る。

微笑み返されて・・・・。

「ああ、ネックレスだろ?」

「うん! 驚きだよな〜あれ」

「そうだな・・・・さ、それよりも早く着替えろ、準備が大変なんだから!」

短く答えて菊丸の支度を促す。

「え〜大石も相手してくれないの?」

不二に引き続き話を早々に引き上げられた事に不満を貰す。

「分かったから! その話は後でな。さ、急いで!」

「分かったよ〜」

のろのろと帰り支度をする菊丸を見て大石が溜息をつく。

そんな2人を不二が静かに見ていた。



「準備って?」

大石がドアノブに手を掛けた時、不二が聞いてきた。こういうタイミングで聞いてくるのが彼だ。

「俺たち、今度一緒に住むんだよ!」

にゃはは、と笑いながら答える。

「こ、こら英二!」

大石が菊丸の腕を引っ張る。

「一緒に・・・?」

「うん! なんだよ〜いいじゃん別に〜隠す事でもないし。それで色々荷物まとめてんだよ。」

「そうなんだ」

笑顔で話す菊丸の横で頭を押さえている大石を見て不二が笑う。

「じゃ、俺帰るね。お先〜」

言うだけ言って部屋を飛び出す。

「お疲れ様」

「・・・・まだ帰らないのか?」

菊丸に続いて出ようとした大石が振り向く。

「うん、もう少しいるよ」

「そうか」

「・・・・・・大石」

「ん?」

「良かったね」

その言葉に大石はカーッと顔を赤くする。

「べ、別に俺はそんなつもりじゃ・・・・」

「照れなくても良いよ、別に」

「照れてなんて・・・! とにかくそんなんじゃないんだからな!」

「はいはい」

「あいつは弟みたいなもんで・・・・!」

「・・・そうだね」

「じゃ、帰るから」

バタンっと、彼にしては珍しく大きな音を立ててドアは閉まった。

慌てて外へ出て行く大石を見送って、不二は誰もいない部屋を見渡す。

並ぶロッカーの1つに目がとまる。

まだいるだろう彼をもう少し待ってみよう思う。


「ちょっと・・・・羨ましいかな」

ぽつりと呟いて目を閉じる。




今日はいつもよりも疲れを感じたようだった。