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「なんだこれは・・・」
手のひらに載せられた冷たい感触に手塚は眉を寄せる。 「ネックレス」 にっこりと微笑みながら不二は手塚を見つめた。 その言葉に、ふっと小さな溜息をついて・・・・顔を上げる。 長い前髪が揺れる。 そんな仕草ひとつにも妙な色気を感じさせた。 まったくタチが悪い・・・・不二は心の中で舌打ちをする。 「手塚もさ、もう新人じゃないんだから、これぐらいつけなよ」 本当に地味なんだから・・・と言葉を続ける。 手塚がこの職業に珍しく貴金属を好まないのは有名だ。 服以外で身につけている物といったら腕時計ぐらい。 それでも充分にその持って生まれた美貌で人を惹きつけてやまない、それは確かだ。 「・・・・こういうのは嫌いだ」 相変わらず無愛想な物言いに不二は肩をすくめた。 本当に良くこんな会話で指名がくるものだとあらためて思う。 ・・・・・よく言葉が少ない分、その口から発せられる言葉には誠実さがともなうという。 以前手塚にお熱だったという女性もそう言っていた事を思い出す。 でも・・・と不二は目の前で無表情に鎖をいじっている男を見る。 手塚が本心を言っているのかどうかなんて誰が分かるのだろう。 周りももしかしたら本人さえも本心だと思っている事が、もしかしたら嘘かも知れない・・・・不二はそう考える。 それに比べれば・・・・自分は口先だけでも愛を語る事が出来る。 でもそれに罪悪感はない。 そうしなければこの仕事は勤まらない・・・そう思っているからだ。 ま、何はともあれ手塚には小細工無しで客がつく。 それはこの店での常識だった。 不二は時々、そのことへの嫉妬を感じる。 でもそれ以上に少しずつ積もっていく想いもまた存在していた。 「そんな事言わないで・・・ほら貸して」 いつまでも手のひらに載せたままのネックレスをとり、鎖の留め金を外す。 「少しぐらいこういうのつけると、また雰囲気変わるよ?」 いい、と身体を引こうとする手塚の腕をとる。 「ほら、じっとして」 嫌がっている割には、腕を振り払おうとしないところが何となくおかしい。 案外思った程、抵抗がないのかもしれない。 不二は手塚の首に手を廻して、パチッと鎖を繋ぐ。 白い首に揺れるそれは扇情的で。 「何だ?」 いつまでも腕をはずさない不二に問う。 「別に・・・・いいじゃない、たまには」 「人に見られる」 「まだ早い時間だよ。・・・・誰も来ない」 「だが・・・」 「黙って・・・・」 いい? ぐっと引きよせて唇を合わせた。 いつもそう。 けしかけるのは不二の方で、仕方ない・・・・という感じで手を廻してくるのがいつものパターン。 そうすることで手塚は逃げているのだと不二は思っている。 でもそれでも構わない。 いつか必ず手塚から欲しがるようにしてみせる。 ほら、今だって・・・・だからきっと、いつか・・・・・。 このネックレスは、ほんの挨拶代わり。 彼が誰の物なのか・・・・それは誰にもわからないのだから。 今はそれだけでいい。 自己満足に過ぎなくても・・・・・。 その晩 手塚の胸元に揺れるものに他のホストも客も目が離せなかったという。 |
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