月夜 〜雪兎の場合〜


とても静かな夜・・・
聞こえてくるのは虫の音だけで・・・
肌に触れる空気はとても気持ちよくて、火照った身体にはちょうどいい。
時折お風呂場の方から聞こえてくるのは
とーやが入っているから。
お湯をかける音や洗面器なんかが当たって、カランっと響く。
好き・・・だなこういうの。
家の中で他の人の気配があるのって。
それがとーやなら尚更・・・・。

前は・・・・おじいちゃんやおばあちゃんがいると信じていた頃は
淋しいなんて思わなかった。
でも、そうじゃないんだって分かった時から、
一人でここに住んでいるんだって分かった時から
無性に淋しくなる時があって、堪らなくなる。

でも
そういうの何も言わなくてもとーやは感じ取ってくれて
週末は大体どちらかのうちにお互いが泊まるようになって。
本当に僕は幸せだなあって思う。
とーやに出会えて本当に良かった・・・・。



そんなこんな考えてたらとーやに声かけられた。
振り向くと紺の濃い浴衣が良く似合っていて、
見慣れているとーやなのに、ドキドキした。
「満月か・・・」って腰を下ろす。

隣に座ったとーやの涼やかな横顔が好き。
この人と今こうやって月を見あげることが出来る・・・・
そんなことが嬉しい。

どうしてかな? 満月の夜ってとっても人恋しくなる。
人恋しいって言っても誰でもいいわけではなくて
とーやのことなんだけどね。
だから満月の時は特にとーやに側にいてもらうようにしてるんだ。
とーやは気づいてるかな?


ちょっと考えて・・・・
でも我慢できないから身体を寄せてみた。
石鹸のいい香りととーやの匂いが、僕を包み込む。
とーやの手が肩にかかってぐっと引き寄せてくれた。
もっと、もっと引き寄せて欲しい・・・


二人で月を見ていたら珍しくとーやがロマンチックなこと言って、
そして僕の髪に口づけを落としてくれたんだ。
いつもとーやは僕を大切にしてくれる。
それがとても嬉しいけれど、
時々もっと激しく求めて欲しい・・・って思うこともあるんだ。
そう・・・・こんな満月の夜は・・・・。




とーやが僕の中に入ってくる・・・
一つになる瞬間。
このまま、このまま時間が止まればいいと思う。
とーやが僕を抱きしめたまま世界が終わるのならそれでもいいとまで思ってしまう。

普段の僕はこの日ばかりは姿を消して
ただとーやを求めるだけになる。
とーやのくれる快感が全てで
とーやのくれる言葉が僕の世界。
自分でも驚くほどの気持ち。

こんな僕にとーやは気づいているのだろうか。
こんなに激しい思いを抱いていることに・・・・

大好き、大好きだよ、とーや。
僕を力一杯抱きしめていて
貴方の一部に僕はなりたいんだ・・・・。

2001・9・20
M・Hinase