「雨降りそうだな・・・」

ふと聞こえた声に顔を上げた。

桃矢はレポートを書いていた手を止め、ぼーっと外を眺めていた。

「予報じゃ夕方から雨だって言ってたよ。」

朝見たテレビの番組を思い出しながら、雪兎は答える。

「そっか・・・」

外を見る目を動かさないままに返事をする桃矢の顔を見つめながら雪兎はそっと溜息をつく。



・・・・疲れてるんだ・・・・・

桃矢は昨日まで休み無しのイベントのバイトが1週間続いた。

その前にも単発のバイトを入れていて。

やっと一息と思ったらレポートの提出期限が迫っていて・・・。

そんなこんなで雪兎の家で作業をしていたのだが。

さっきから何回目だろう・・・・桃矢は手を止めることが多く集中できていないようだった。

家で休ませてあげていた方が良かったかな・・・と雪兎は思う。

バイトで忙しかった桃矢と久しぶり会える嬉しさで、つい誘ってしまったけど

レポートを手伝うね、とか言ったりして・・・・本当は一緒にいたかっただけ。

電話だけじゃ物足りない、会って顔を見たい・・・。

我が儘と分っているけど、それでも我慢できなくて。

それを桃矢は気持ちよく聞いてくれたけれど。

・・・でもやっぱりゆっくり休ませてあげれば良かったな・・・

そんなことを今更ながら思っている自分って。

まだ外を見つめている桃矢にかける言葉も見つからなくて雪兎は再び溜息をついた。





「やめた、やめた!」

突然の大きな声にびっくりして顔を上げる。

「とーや・・・・?何・・・」

「ゆき、用意しろよ。とりあえずレポートはこれでおしまいだ。」

急に動き出した桃矢を雪兎は見つめる。

「用意って・・・?」

「泊まる準備。」

「えっ!?」

そこでようやく桃矢はバタバタと片づけていた手を止めてふっと笑った。

「2,3日家に来いよ、ゆき。大学もうちから通えばいい。俺もしばらくはバイト入れないから。」

「え?でも・・・・」

話の展開についていけず雪兎は戸惑って桃矢を見つめるだけだった。

桃矢はそんな雪兎の隣に座り込む。

「ごめんな・・・」

そう言いながら雪兎の頭に手をのせた。



言われたのはその一言、たった一言。

でも・・・

『寂しかったろう?』

そう言われたような気がして、雪兎は胸が詰まった。

謝ることなんてないのに。桃矢が悪いことなんて一つもないのに・・・。

どんどんあふれ出る気持ちを口に出せずに、雪兎は唇をかんだ。

そうでもしないと涙が出そうで。

この空と一緒になりそうで・・・・・・。



「ありがとう、とーや・・・」

言えたのはそれだけ。

その言葉に照れくさそうに笑う桃矢が雪兎には眩しく見える。



交わす言葉は少ないけれど

誰よりも何よりも大切な相手だから・・・・



そっと手を伸ばしたら馴染んだぬくもりに包まれて。


雪兎は目を瞑った。

2002・5・24
M・Hinase

★何気なく綴った物、意味なくてすみません・・・。
曇った空を見てきたら何となく・・・・;
こういう静かな(?)時間って好きです。
しかし、久しぶりでこういうSSってどうでしょうねえ?