| あっ・・・・・ 校舎の陰、二人の姿を見た瞬間、雪兎は足を止めた。 とーや・・・? かなり距離はあるけど、間違えることはない。 雪兎はとっさに近くにあった掲示板に身体を隠しながら、そっと伺い見る。 こちらに背を向けている桃矢に気づかれることは無いと思うが、 なんとなく見ては行けないものを見てしまった・・・という思いから隠れてしまった。 桃矢の前にいるのは、俯いて顔ははっきり見えないが確か同じゼミの人。 いつも明るく笑って、はきはきしてて気持ちの良い女性。 活動的な彼女はゼミでも貴重な存在で目立っていた。 何度か話もしたことがある・・・・と雪兎はふとその時の様子を思い出しては 少し離れた所に見える二人に目を戻した。 時間にして約15分くらい。 二人は話をして・・・・そして別れた。 何を話していたのかなんて聞こえない。 でも・・・ 別れるときにずっと下を向いていた彼女が顔を上げて笑い、 桃矢に握手を求めていたのを見たとき、その内容が分かってしまった。 反対方向に歩き出しながら雪兎は溜息をつく。 この後桃矢に会うことになっているけど、なんか気が乗らない。 きっと・・・ 彼女は桃矢に告白をしたのだ、そしておそらく桃矢はそれを断ったのだろう。 それは自信とかいうのではなく、桃矢の性格から考えてのこと。 それに笑ってはいたが、彼女の様子からも・・・・・。 初めてではない。 大学に入ってから何度か見かけた光景。 方法は色々、手紙だったり、電話だったり、今日みたいに会っていたり・・・。 でもいつも結果は同じなんだけどね・・・・ と、雪兎は今までのことを思い浮かべる。 そう同じ。 いつも桃矢は自分を選んでくれる。 それはとてもうれしいこと。 自分にとっても桃矢以外考えられないのだから。 けれど、ちょっとだけ・・・・こういう光景を見た後、そして噂で聞いた後、 やっぱり考える。 何度も問い返してきたこと。 『いいんだろうか・・・・』 この言葉が頭から離れない。 考えまいとしても、こういうときだけは仕方がない。 自分の幸せと桃矢の幸せと同じ方向に向いていることは疑いのないものなんだけど。 それでも・・・・・。 青い空、風にながれる雲をぼんやりと眺めながら雪兎はまた溜息をつく。 校内の片隅、大きな銀杏の木があるこの場所は雪兎のお気に入りだった。 こんなときこそ一人でいると良くないことは分かっているのに。 側にいて、その顔を見て・・・・それが一番の薬なのに。 雪兎は木に背を預けて目を瞑った。 会いたいけど・・・会って触れて・・・・ でもさっき見た光景がちらついて、素直になれない自分がいる。 「とーや・・・・」 小さく声に出して読んでみた。 「なんだ?」 ・・・・えっ!? その声にぱっと目を開けた雪兎の視界にぬっと桃矢が現れた。 「わっ、と、とーや?」 突然のことに大きく目を見開く雪兎の顔を覗き込みながら桃矢が口をとがらせる。 「なに驚いてるんだ?・・・・それに、待ち合わせは中庭じゃなかったか?」 時間も過ぎてるし・・・と少しむっとした口調に雪兎は目をそらして、 ごめん・・と呟く。 「ゆき・・・?」 「あ、ううん。何でもないよ、ごめんね。」 そう言うと雪兎は立ち上がった。 何か言いたげに自分を見つめる桃矢の視線を受け止められず、目が泳いでしまう。 「あ、あの・・・」 上手く言葉が出てこない。 その時、何を言って良いのか迷っている雪兎の頭にそっと手が置かれた。 雪兎は桃矢を見上げる。 「とーや?」 置いた手で雪兎の髪を梳く。 雪兎を見つめる瞳が少し笑っていた。 「・・・・おまえだけだから・・・」 ぼそっとそう呟くと照れたようにぱっと顔を横に向ける桃矢を見つめる。 ・・・とーや・・・ 赤くなってそっぽを向きながら、自分の髪をいじる桃矢。 その手から温かいものが流れ込んでくるようだ。 いつもいつも自分を包み込んでくれる手。大好きな大好きな、大切な手。 雪兎はその手をとり、両手で包み込む。 「うん」 そう答えると、その手にキスを落とす。 「/////!」 感触に思わず振り返った桃矢がますます真っ赤になるのが見えた。 その顔を見ながら雪兎が笑った。 ・・・・信じて歩いていこう、自分の選択が、桃矢の選択が幸せに繋がることを。 新緑の季節、恋人達のある日の風景。 それはほんの小さな、でも幸せの一コマ。 |
2002・4・26
M・Hinase
| ★・・・・なんでしょうねえ、テーマがはっきりしませんが; でも何となく書きたかった話。 桃矢くんももてると思うのよね〜それにからませてみましたが・・・・ま、雪兎さんもこういう場面見ると、どんな気持ちかなと思ったので・・・。 結局ラブラブなんですけどね(笑)。 |