「ハニー!!!」

昼休み、廊下に一歩出たかでないかというときに声が聞こえた。

隣にいる和希の大きなため息が聞こえる。

「ハニー!」

さっきよりかは明らかに近く大きくなった声に啓太は引きつった顔を向けた。

そこには案の定、笑顔いっぱいの成瀬が立っていた。

「な、成瀬さん・・・」

「ハニー、今からお昼?」

「ええ」

「ちょうど良かった、ほらお弁当作ってきたんだよ」

「え?・・・でも成瀬さん昨日まで遠征で出てたんじゃ・・・」

それに今日は代休で休みが取れるはずだとも聞いている。

「じゃあ・・・わざわざそのお弁当のために出てきたんですか?学校・・・」

「そうだよ!ってハニー、感激だな。僕の予定を把握してくれてるんだ!」

「・・・成瀬さんが毎日毎日言ってくるんじゃないですか。相変わらず暇ですね」

ぼそっと和希が言う。

2日間学校に出てこられず、ようやく啓太と昼食を!と楽しみにしていたのに早速登場のお邪魔虫に和希の機嫌は急降下だった。

「あれだけ言われれば覚えますよ」

「か、和希」

「おや、僕は君に覚えて貰おうとは思っていないよ。さ、君も食事だろ? 早く行かないと食堂はいっぱいになるよ」

やっぱりというか、成瀬は和希と一緒に食事をする気はないらしい。

「・・・そうですね、啓太行くぞ!」

そう言い放つと、啓太の腕を掴む。

「え?」

とととっと和希に引きずられて啓太は傾いてしまう。

「何するんだ遠藤! 啓太は僕と食べるって決まっているんだから」

そう言いつつ、もう片方の腕をとる。

「いつ決まったんですか、そんなこと」

「そう決まっているんだよ、ね、ハニー」

「あ、あの・・・」

両方の腕をとられ、あはは・・・と笑うしかない啓太は頭の中で解決策を探すが何も浮かばないまま、身体を揺らされる。

「ちょっと、ふたりとも!」

もうこうなったらある意味ふたりの世界だ。

啓太の言葉なんか両者共に聞いちゃいない。

「成瀬さんしつこいですよ! そんなことばかりしていると啓太に嫌われますからね」

「君こそ、先輩に遠慮するとかないのか!? 無礼な奴だな」

「くっ・・・とにかく昼食は俺とですから!」

「それこそ決まっていないことだよ、ね、ハニー!」

「いちいちハニーって言わないでください!」

「煩いな、僕がどう呼ぼうと勝手だろ?」

ぎゃあぎゃあぎゃあ・・・・

右に左にと身体が揺すぶられる啓太は、クラスメイト達が哀れみの目を向けながら通り過ぎていくのを見送る。


・・・・どうでもいいけど・・・お腹空いたよ・・・俺・・・・


「離してください!」

「君こそ離せ!」


・・・・・いつもの平和な光景が今日も繰り返されていく・・・・
啓太は笑いながらも遠い目をするばかりだった・・・


この後通りかかった七条によって、言葉巧みに会計室へと啓太は攫われることになる・・・・
それはまた別のお話

2004・5
日生 舞