| 「ずいぶんと日が長くなったな」 読んでいる本から目をあげて岩城さんが言う。 俺はいつものように岩城さんの膝を独占中だ。 日が沈むまではまだすこし、午後の穏やかな日差しがリビングに満ちている。 「そうだねー、いつの間にって感じだね。俺たちってさ、時間の感覚のない仕事してるじゃない?だからかな、こういうふうに少しでも季節が移っていくのを感じられるのっていいなって思うんだ」 「・・・おまえにしちゃずいぶんとまともな発言だな」 「なにそれ!ひどいよ。俺だってね、日本人なの。風流を愛でるって感覚はあるんだからね」 「風流か?・・・」 くすくすと笑いながら岩城さんはまた本に目を戻す。 そしてこれまたいつものように指で俺の髪を触り始める。 こうしている時間が俺たちふたりにとっては何よりの時間。 お互いに落ち着いてゆったりとできる。 それにしても久しぶりだ。 ずっと岩城さんは京都だったし、俺もドラマの撮りが押してて家でのんびりなんてできずに居たからね。 最近はヨウジも諦めたのか、俺と岩城さんの膝まくらを奪いあうこともしなくなったし。 あれはあれで楽しかったんだけどなー。 そういや、ヨウジは何処いったんだ? 俺たちがこうしてるときは、たいてい岩城さんの足元で寝そべってるんだけどな。 今日は暖かいから、庭で遊んでるのか・・・岩城さんがもらってきたチューリップの球根がずいぶんと気になってたみたいだったから掘ってたりして。 「ねぇ岩城さん、このあいだの球根どこに植えたの?」 「チューリップのか?」 「そう。やけにヨウジが気に入ってたみたいだったからさ」 ふむ、と答えると岩城さんは本を置いてテラスに目を向ける。 「あいつ、まさか掘り返してないだろうな」 「でも言い聞かせたんでしょ?花が咲くまで駄目だって」 「まあな・・・でも一旦欲しいとなるとおまえと一緒でどうやっても手に入れようとするからなあいつも」 「俺と一緒ってどういうこと?それってずいぶんじゃない!」 「まあいいさ、ちょっと見てくる」 ヨウジと一緒にされた俺は(まあ、しょっちゅう似てるって言われてるけどさ)、岩城さんの膝からどかないことにした。 くるりと身体の向きを変えて、岩城さんの腰に抱きつくようにする。 「こら、邪魔するな香藤」 「だって岩城さん俺とヨウジを一緒にするんだもん。俺、拗ねてるの」 「何言ってるんだか、そんなのいつものことだろう」 「いつものことって・・・ずいぶんじゃない!」 今の岩城さんの発言は問題アリだよ。 絶対にどかないぞ! それに岩城さんは今日が何の日かまるきり忘れちゃってるし。 そりゃあさ、そういうことに疎いっていうか鈍感だってのはわかってるけどさ。 忙しかったってことも。 でも、でもね。 もしかしたらって微かな希望は抱いちゃったりするんだよね。 俺はいっそうの力を込めて岩城さんの腰に抱きつく。腕力じゃ岩城さんは俺には勝てないからね、そうそう簡単には引き剥がせないよ。 放せといいながら俺の腕と格闘していた岩城さんの動きが止まったなと思ってしばらくすると、思いもかけないことが起こった。 「香藤、ちょっとこっち向け」 俺は顔だけ慎重に岩城さんに向けた。油断して膝から落とされたりしたら嫌だもんね。 「大丈夫だ、落としたりしないから」 岩城さんに言われて、俺はしぶしぶ上を向く。 すると、岩城さんはてのひらで俺の目を覆うと、ゆっくりと顔を近づけてきた。 へ?と思っているうちに、唇がかさなる。 岩城さんのやさしい舌のうごきにうっとりとしていると、いきなり何かが口の中に押し込まれた。 ・・・なに?・・・チョコレートだ。 口にチョコレートを押し込んだあとも、すこし甘いその舌で岩城さんは俺の唇を舐めている。俺がチョコを飲み込むとまた舌を入れてくる。 ひとしきり、俺の口腔を蹂躙すると耳元で囁いた。 「香藤・・・好きだ」 あまりの嬉しさに俺は声もなく、岩城さんをぎゅうーっと抱きしめた。 そして。 上機嫌の俺と岩城さんが見たものは・・・ せっせと球根を掘り起こして、自分の秘密の場所に埋め変えているヨウジの姿だった。 「ヨウジっ!おまえ何やってんだっっ!!!」 岩城さんの怒鳴り声に振り向いたヨウジの口には、球根がしっかりと銜えられていた。 |
☆肩こりがひどくて頭痛が出ている時に
ようこ様からいただいたお見舞いのお話です〜vv
堪能して堪能して、で、やっぱり我慢出来なくなってご承諾を得て
掲載させて貰いましたv
ようこ様ありがとうございます!!(*^_^*)
岩城さんと香籐くん・・・そしてヨウジの生活の一場面、
とっても心を和ませてくれましたv
本当に感謝感謝です。