鷹秋が理想とする、完璧なホストの姿。
岩城は職場である「店」だけでなく、鷹秋と共有していたプライベートでまで、それを演じることを決めた。
理想と言う夢で象られた完璧なその姿を。
 
 
 
岩城が店を早めに引けた時は、必ず口にする寝酒(ナイト・キャップ)。それをキッチンで用意していた鷹秋は、リビングから一瞬だけ聞こえた鈍い音にその手を止め、カウンター越しに岩城を見た。
 
「どうした?鷹秋」
「あ、いえ…。何でもないです。すみません、今、用意しますから」
「別に急がなくてもいいぞ。お前も疲れているだろう?」
 
ゆったりとソファに腰掛け、紫煙を燻らすその姿は、鷹秋が見知ったいつもの岩城の姿だ。「新宿No.1」の称号だけでなく、昨今は「ホスト界のカリスマ」とまで呼ばれる姿に相応しい。悠然とした仕草の中に見える風格に、知らず視線を奪われてしまう。
 
岩城が長い脚を組替える、その衣擦れの音に鷹秋は我に返った。
 
グラスを手にリビングへ向かうと、彼は足元のテーブルの方へ手を伸ばし、まだ半ば以上残っていた煙草を灰皿へ押しつぶした。
 
「どうぞ」
「ああ。ありがとう。…俺の事は気にせず、先に休んでいろ」
 
カランとグラスの中の氷が澄んだ音を立てる。
受取ったそれをひとくち口にし、労うように微笑む岩城の姿に、鼓動がひとつ強く打ったのを鷹秋は自覚した。
 
「はい。…それじゃお先に…。お休みなさい」
頬が熱い。きっと今の自分は、紅い顏をしてしまっている。
そんな姿を見られてしまう事が恥ずかしくて、鷹秋は足早に寝室へと向かう。
 
「ああ。お休み」
 
鷹秋の後ろ姿を、岩城は見詰め続けた。
 
寝室の扉が閉ざされ、明かりが消える気配を確かめるまで。
そして。
 
 
 
 
 
 
岩城は、深くゆっくりと吐息を吐き出した。
 
 
空いた片手で、先ほど組替え下にした己の爪先にそっと触れる。
そこは未だ脈を打ちながら、岩城に声にならない痛みを与えていた。
 
 
ホスト心得・第17条
ホストは如何なる時でも、平静を装い取り乱してはならない。
キープ・スマイル。
 
………例えテーブルに足の小指の先をぶつけても………
 
 
 
 
−END−





★あずま様からのお誕生日プレゼントです\(^_^)/
ホストネタ!
しかもカリスマ岩城・・・・・・ぷぷぷぷっ。
そうだよね、辛いことがあってもたとえ痛くても我慢我慢だよねぇ〜
もう最高です〜!
素敵なプレゼントいただきましたわ〜〜〜vvvvv ありがとうございます!