・・・どうやらあのまま少し眠ってしまったらしい。
明るかったはずの外は、薄闇に包まれている。
レースのカーテン越しにぼんやりとホテルの灯りが見える。

俺の腕に頭を乗せて香藤は静かな寝息をたてている。

「一晩中、愛してあげる」そう言って香藤は俺をベッドに。
そして一度抱かれたあとで、俺も香藤を。
俺の腕の中にいるあいつはとても可愛い。
時折見せる幼げで恥ずかしげな様子は、たまらなく可愛い。
俺たちにとっては、抱く側も抱かれる側も無い。
ただ、お互いを愛しているだけだ。
圧倒的に俺が抱かれることが多いのも事実だが、
心も身体も香藤に創りかえられた俺にとってはそれもごく自然なことだ。

「・・・ん、岩城さん・・」
俺の名を呼びながら香藤が寝返りを打ち、背を向ける。
しばらく眺めていたが、まだむにゃむにゃと何やら寝言を言っている。
疲れさせてしまったか?
顔を見ようと起き上がりかけたところで、中に残っていた香藤のものが
下肢を流れるのを感じ身体が熱くなる。
・・・シャワーでも浴びるか。

俺は、そっと腕を抜くと香藤が目を覚ましていないことを確認してから
バスルームに入った。
このバスルームは、大きな四角いバスタブの角の二辺がすぐに窓になっている。
最上階にあるので眺めも、素晴らしい。
より一層濃さを増していく空に、輝くネオンが際立ってくる。
ぼんやりとお湯に浸かりながら眺めていたが、バスバブルが目に止まり、
試してみようという気になった。
自宅にはGIGOLOのバスバブルがあるが、俺はあまり使わない。
あの香りは・・・日常向きではないから。
ラベルを見ると、moon flwerとある。
月の花?
砂漠に咲くと言う?
どうやら、それをイメージして合成した香りらしい。
どんなものなのか俄然興味が湧いてくるから不思議なものだ。
ネーミングというのは、大切なんだな。

淡いピンク色の粉末だ。
手のひらで少し泡立てて香りを嗅いでみると、
ほのかに甘くさわやかな香りがする。
気に入った。
きつい香りは苦手だが、これならいいだろう。
栓を抜いてお湯を減らし、バスバブルを入れると勢いよくカランを捻る。
ほんのり若草の青い香りが混じったようなやわらかで甘い香りが満ちてくる。
それと同時に、どんどん泡が溢れてきた。
慌ててお湯を止めたが、泡は後から後から生まれてくる。
どうやら入れすぎてしまったらしい。
栓を抜いて、お湯の量を減らそうとしたところで滑る泡に手をとられて
身体を支えきれずに、思い切り泡でいっぱいのお湯に頭まで浸かってしまった。
やっとの思いで顔を外に出したが、口の中にも泡が入ってしまい
苦いことこの上ない。
思わず、叫んでいた。

「かとう・・香藤!香藤!・・・香藤ーーーっ!」



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


・・・とう!・・・香藤!かとうーーーっ!

・・・なに?・・・・岩城さん?
どこか遠くから聞こえる声で、俺は目が覚めた。
あれ?
隣りに居るはずの岩城さんが居ない。
どうしちゃったんだろう?
目が覚めたばかりでぼんやりした頭で考えていると、叫び声がした。

「香藤!香藤―――っ!」
へっ?
一気に覚醒した俺はベッドから跳ね起き、声のするほうへと走った。
慌ててバスルームに飛び込むと、頭に泡をのっけた岩城さんが必死な様子で
俺を呼んでる。
「どうしたのっ!」
「ああ、良かった香藤、気付いてくれて。
 おまえに気付いてもらえなかったらどうしようかと思ってたところだ」
ほんとうに嬉しそうな顔で岩城さんが俺を見る。
「とにかく、そっから出なくちゃね」

どうやらバスバブルで滑りすぎて、出れなくなっちゃったみたいだ。
このバスタブ、やたらとデカイもんね。
俺も岩城さんも身長低くはないけどさ、外人の感覚ってどうなってんのかね。
スイートだからってこんなに大きくなくてもって思うよ。
寝そべっても足が向こうに着かないもんね。
引っ張りあげた岩城さんは、この状況が恥ずかしくなったのか
「助かった、ありがとう」と言うと、シャワーも浴びずに洗面台のところに
行ってしまった。
と、思ったら盛んに口をゆすいでいる。
そっか、口にも入っちゃったんだね。
そりゃ、苦いよね。

「頭に泡くっついたままだよ?」
俺はバスタオルを取ると岩城さんの後ろに立ち、泡だらけの頭をそっと拭う。
「大丈夫?もう口の中苦くなくなった?」
やっと顔を上げた岩城さんが、鏡越しに微笑む。
「ああ、ありがとう。悪かったな、眠ってるのに起こしてしまって」
「なに言ってんの。俺の大切な大切な岩城さんのピンチに眠ってなんていられない
でしょ?それにしてもどうしちゃったの?」
「思ったよりも泡立ちが良くってな・・・」
「じゃ、なくてさ。岩城さんがバスバブルなんてめずらしいじゃん」
「ああ、そのことか」
何だか岩城さんが照れている。
俺、変なこと聞いた?
そのまま俯いてしまった岩城さんを鏡越しに見る。
洗面台の幅一面に取り付けられた鏡に俺と岩城さん。
ほんのり頬を染めて、どう言おうか迷っている岩城さんがすごく可愛い。
頭や肩を拭ったタオルを投げ捨てて、俺は岩城さんを後ろから抱きしめた。
驚いて岩城さんが顔を上げる。
鏡の中で目が合う。
何故か岩城さんが洗面台にピタリと張り付くようにして前に逃げようとする。
逃がさないよ。
「どうしたの岩城さん?」
「な、なんでもない」
「ふ〜ん、そう?」

俺は岩城さんのうなじや肩にキスを始める。
唇が触れるたびに岩城さんの身体にほんの少し力が入るのがわかる。
「よせ、苦いだろう・・・っ」
うなじを舐め上げたら、語尾が震えた。
「甘いよ・・・ねぇ、岩城さん?洗面台に隠れて見えないけどさ、感じてるでしょ」
抱きしめた腕を少し緩めて、胸の蕾を摘んでみる。
岩城さんがピクリとする。
その隙を狙って、岩城さんの中心があるあたりの泡を払う。
「あっ」
ヒット! さすが俺。
指の先に岩城さんの立ち上がったものが当たり、そこだけ泡が消えて
先端が覗いている。
左腕でぐいっと岩城さんの腰を引き寄せると、鏡にそこまで映った。
岩城さんは慌てて両手で洗面台を掴もうとしてるけど、
そんなことさせないよ?
「よせっ、香藤っ」
「ねえ、見てごらん。泡から覗いちゃってるよ」
思わず顔を上げてしまった岩城さんが、鏡の中に見たもの。
それは、俺に後ろから抱きしめられて頬を染め、消えながら腰にまとわり
ついている白い泡の中に屹立させた先端を覗かせている自分。
瞬間、岩城さんの身体が紅く染まる。
身を捩って逃げようとする岩城さんをしっかりと抱きしめ、
既に自己主張をしている俺自身を岩城さんに擦り付ける。
「・・・っ・・っふ」
岩城さんの中心に手を伸ばして、ぎゅっと握りしめると顎が上がる。
白い喉元がさらされる。
鏡に映るその姿はしどけなくとても綺麗だ。
俺は唇と指で、ゆっくりと岩城さんを味わう。
俺の肩に頭を乗せて喘ぐ岩城さん。
あんまり可愛いから、少しイジワルしたくなった。

「ねぇ、見てよ、鏡見て?・・・岩城さん、すごく綺麗だ」
最初はいやいやをするように首を振っていた岩城さんだけど、俺が先端を
引っ掻くようにすると我慢できなくなってきたらしく「香藤、かとう」と
小さな声で俺の名を呼びながら、鏡に目を向けた。
耳たぶを甘がみしながら、囁く。
「綺麗だよ、岩城さん・・・幸せそうな顔してるでしょ?」
微かに頷く。
その仕草がまたたまらない!

俺は岩城さんを抱きかかえるようにして、バスタブに入る。
あれほど盛り上がっていた泡も殆んど消えている。
俺は岩城さんをお湯に浸からせると、後ろから抱きかかえた。
「・・・香藤?」
切なそうな声で岩城さんが俺を呼ぶ。
「ん? なに?岩城さん」
岩城さんは唇をかみ締めると、黙って俺の手を自身に添えた。
「欲しいの?」
そうだよね、欲しいよね。
あと少しってとこまで焦らされて、放り出されたんだもんね。
でも、聞かせて欲しい。
岩城さんの口から聞きたい。
俺を欲しがってほしい、もっともっと。
「一度イク?」
微かに岩城さんが首を振る。
「辛いでしょ?このままじゃ」
「おまえが、そうさせてる・・・んだろ? でも俺は、おまえを
・・・俺の中に感じたい」
「岩城さんっ!」

あまりに可愛い告白に俺の理性はぶっ飛んだ。
岩城さんを窓に向けて立たせると、後ろから一気に貫いた。
「あっ!あああーっ」
甘い悲鳴が上がる。
「あっ・・・いっ・・・やぁ・・」
打ち付けるたびに漏れる甘い甘い喘ぎ。
「いっ、岩城さんっ・・・くっ」
岩城さんの中は、熱くて熱くて。
もう何も考えられない。
「イクよ、岩城さん・・・おれっ、もうガマンできないっ」
「んあっ・・・ああっ・・・っ」
岩城さんの背中が反り、きつく締め付けられる。
俺も熱いものを岩城さんの中に解き放った。



  〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



「なぁ、香藤?」
バスルームから戻っても香藤は俺を抱きしめたまま放さない。
香藤の腕の中は、心地良く、安らぐ。
「なに?」
「特別なんだ・・・バスバブル」
「あの香りが?」
「・・・いや違う」
そのまましばらく黙っていたが、香藤は俺の髪を梳きながら何も言わずに
待っている。
普段はやたらとおしゃべりなくせにこういう時は俺の好きにさせてくれる。
こいつのこんなところにも惹かれている。
やたらに子供かと思えば、妙に大人で。
ぼそりと呟く。
「GIGOLO・・・」
うん、と頷きながら香藤の唇が降りてくる。
「たくさんたくさん、愛してあげる」
  
  
                             end

                                                   
   



ようこさんからいただきました〜☆
同盟の企画に間に合わなくて;;とのことで
サイトお引っ越し&10hitのお祝いとして頂きましたv
わふわふ。ありがとうございます!
濡れ濡れの岩城さん・・・・素敵です〜らぶv
香藤が本当に”狩り”をしているようで萌えましたわ〜vvv
本当にありがとうございますv 
大切にしますね〜(*^_^*)