蒼く ほの白く

「待ってよ・・・待ってっ!行かないでよっ。俺を置いてかないでよ・・・」

思い切り腕を伸ばしたところで、目が覚めた。
どうやら夢をみていたらしい。
・・・夕べ見たドラマのせいだ。

仕事が忙しくてすれ違ってばかりだったのも影響してるんだと思う。
それは、岩城さんにしてはめずらしい2時間ドラマだった。
しかも犯人役。
舞の宗家の次期家元の相続争いで、ライバルを殺してしまう役だった。
その最後のシーン。

岩城さんは、一本の桜の木の下で白装束で舞いながら服毒するんだ。
舞い終わるのと同時に花びらが散るなかで死んでしまう。
まるで桜の木と同化していくようで、思わず俺は画面に向かって叫んでいた。
「逝かないでっ」って。
そのせいかな、同じ場面を夢で見てしまった。


俺は傍らにあるはずの愛しい温もりに手を伸ばした。

・・・あれ?
居ない?
いつもそこに居るはずの岩城さんに触れることが出来ず、俺の意識は急速に覚醒した。


夢じゃなかったら?
本当に岩城さんがいなくなっちゃってたら?
俺は焦ってベッドから飛び出した。


部屋の中は、月明かりに照らされてほんのりと明るい。
たしか眠るときにはカーテンが引かれていたはず。
岩城さんが開けたんだろうか。
ベランダへ通じる窓が開け放たれている。
そっと近づくと、岩城さんは手摺りにもたれて月を見ていた。
俺は黙って背中から岩城さんを抱きしめた。
肌が冷えている。

「・・・だめじゃん、こんなに冷えて・・・何してんの?」
「ああ・・・すまない・・・目が冴えてしまってな」
「何処か行っちゃったんじゃないかと思って、俺ひどく不安になったよ」

岩城さんは、まわした俺の腕を取ると自分の顔に手のひらを押し当てた。
「あたたかいな・・・」
「あたりまえでしょ、俺は岩城さんを守るためにいるんだからね」
「ふふ、そうだな・・・おまえは俺の手を離したりはしないよな」
「もう!何言ってんの・・・どうかした?」
「・・・いや、何でもない・・・だた・・・」
「ただ・・・なに?」
「月のひかりを見ていたら、自分が居るこの場所は現実のものじゃなくて・・・振り向いたらおまえが居なくなってしまってるんじゃないかなんて思ってしまって・・・それで怖くて部屋に戻れなかった。今の幸せが幻になってしまうんじゃないかって」
俺は思わず力を込めて岩城さんを抱きしめた。

「そんなことあるわけない!俺は何があっても、どんなことになっても岩城さんから離れたりしない!そうでしょ?」
「ああ・・・」

腕の中の岩城さんは、ひどく頼りなくて淡雪みたいに消えてしまいそうで。
抱きしめても抱きしめても震えていて。
気がつくと静かに涙をながしていた。



2005・2・16  ようこ




風邪で体調を崩していた時にいただいた
お見舞いSSですv
ようこさん、ありがとうございますm(_ _)m
ああ、すごく設定がツボで!!
何回も読み返しては萌えをいただきましたv
白装束で舞う岩城さん・・・・・素敵すぎます
と同時に、なんて悲しいドラマなんでしょう・・・・・
情景が浮かびそうな描写にふるふるしてしまいました


で、大変申し訳ないです;;
この文に感化されてちょっとだけ続き?のようなものを書いてしまいました
(岩城さん視点)
素敵な作品に駄文を添えてしまう形になり、すみません;
拙作は春抱き部屋に「花の舞い」として掲載しています