花の舞

ひんやりとした空気に包まれる。
窓を開けて見た空には月があった・・・


何か夢見たような・・・でもよくは覚えていない。
目が覚めてしばらく天井をそのまま見つめていたが無性に月を見たくなってカーテンを開けた。

先日撮ったドラマの場面が身体に染みこんでいる。


舞って舞って舞って・・・・降りそそぐ花びらに抱かれるように倒れた。
舞いの指導を受けてのことだったが、途中からは何かに身体を動かされるように感じていた。
自分であって自分でないような・・・それは恍惚にも似た感覚。

満たされると同時に怖かった・・・・

そっと自分の身体を抱きしめる。
短く白い息を吐いた。


花びらの上に倒れ込んで見上げた桜は神々しいまでに美しく、何かを語りかけてくるように枝を広げていた。
このまま此処で終わる命・・・その舞いがまるで桜に捧げられるかのような物語・・・

目を瞑ると身体が浮かび上がる感覚
説明出来ないものに包み込まれ・・・・抱き上げられる感覚・・・・
ああ・・・このまま・・・意識が堕ちていく・・・



・・・岩城さん!・・・


突然頭の中に響いた声にはっとする。
瞬間花びらが強く舞った。



撮影の終わりを告げる監督の声が聞こえた。
戻ってくる音、声・・・そして感覚・・・・
「岩城さん、良かったよ〜お疲れ様!」
スタッフにかけられた言葉に身体を起こした。
清水さんが上着を持って駆け寄ってきた。

「お疲れ様です・・・・・・どうかしました?」
ちょっとぼんやりしている俺に気付いたのか、心配そうに覗き込む。
「あ、いえ・・・ただ・・・」
「ただ?」
俺は桜を見上げる。
「桜に取りこまれるような感覚があったもので・・・・」
「取りこまれる・・・ですか」
そう言って清水さんも桜を見上げる。
「樹齢300年とか聞きましたから・・・何かあるのかも知れませんね」
「300年・・・・」
ふたりして黙り込む。
大きく枝をはったそれは春風に身を震わせているようだった。
降り続く花びらが俺達の髪に、肩に1枚・・・また1枚・・・・・



そんなことを思い出して月を見ていた。
この月の光も・・・そして桜の花びらも同じように降りそそぐ・・・・そんなことを考えた。
自分が自分でないと、そしてこの世界全てが幻だと言われているようで・・・
部屋に戻らなければ・・・と思いつつも、俺は月から目が離せなかった。


どれくらい時間が経ったのだろう、ふと後ろから抱きしめられた。
その慣れた温かさに俺はほっと息を吐く。
冷えている、と俺を叱る香藤の腕に触る。
不安だったという香藤に抱きしめられながら身体を預けた。
もっと強く抱きしめられたくて・・・そして何よりも強く香藤に縛り付けられたくて・・・
俺を絶対離さない!
その言葉が嬉しくて、微笑んだ。



香藤の身体に手を回す。
このぬくもりが身体から離れないように
そして迷わないように・・・・
「岩城さん・・・」
耳元で名を呼ばれる。
・・・・・熱いくちづけが降りてきた・・・・



降りそそぐ月の光の中
舞い落ちる花びらを見たような気がした・・・・・










ようこさんから素敵なお話をいただいて・・・
読んでいるうちに、その続きというか
それを受けての話を書いてみたくなりまして・・・・;;
すみません、ようこさん(>_<)
こんな駄文を書いてしまいました
でもどうしても浮かんだ物だったので書き留めておきたくて・・・

こんな物ですが楽しんで頂ければ嬉しいです・・・・

2005・2・16 
日生 舞