夏風邪



予定より早めの帰宅である。夕方まで掛かるはずだった撮影は、ことのほかスムーズに進み、午後のティータイムに間に合う時間に帰れた。
玄関を開けると、乱雑に脱いである香藤の靴が目に入る。
「ただいま」
自分の靴を脱ぐ前に、香藤の靴を揃えながら呟く。
「まったく、あいつは・・・」
いつもなら飛びつかんばかりに迎えに出る者が、今日は来ない。少し物足りなさを感じながら、リビングへと足を運ぶ。
「香藤?いないの・・・」
ソファに求めている人物を見つけると、ほっと、岩城の頬が緩む。来ないはずだ、寝ている香藤がそこにいた。
「寝てるのか?」
香藤の前に立ち、ネクタイを緩めながら声を掛ける。
「ただいま、香藤」
「・・・ん、あ・・。帰ってたの、岩城さん」
岩城の声に目を覚ましたが、半分夢の中にいるような眼差し。
「うたた寝か?風邪、ひくぞ・・・」
ぼふ、と横に腰掛けながら言うその顔は、とても優しく、慈しみに溢れている。
「んん。・・・・岩城さん、淋しかった。会いたかったよ。」
素早く岩城の膝に頭を乗せ、ぐるっと腰に手を巻き手ける。岩城の細い腰は余裕で香藤の手が回る。
「なんだ、朝出かけてからからそんなに経ってないぞ?」
香藤は岩城の腹にイヤイヤをするように顔を擦りつける。
確かに、今朝でかけたのは8時半。岩城の言うことは尤もだ。何日か会えない時だってあるのだから。
「ううん、朝から会ってないんだよ?十分長いよ。」
まだすりすりとしながら言う。
「今日はずいぶんと甘えん坊だな。」
柔らかい髪を梳きながら、岩城は甘い顔をしていた。
「ん、ごめん。これじゃあ岩城さんを守るどころじゃないね。」
下から上目遣いに香藤が見る。子が親に甘えるようなその様子に、尚更優しく髪を弄る岩城の手。
「いいさ、たまには。ここのところお前も忙しくなって来てるからな。」
「ん。ちょっと疲れたのかも。なんかだるいや。今日は岩城マジックが効かないみたい。」
もっと密着できるように、岩城の腰に手を巻き直す。
「なんだ、それ。」
岩城の髪を梳く手が、愛おしいと言っているようだ。それをわかっているのか、香藤はさっきからずっと甘えている。
「どんな時でも俺を元気にしちゃうんだ、岩城さんは。」
「それならお前もそうだろう、香藤・・・」
夢うつつに話す香藤を助長するかのように優しく囁く岩城。
「そ?」
岩城の言葉が嬉しくて、見上げる香藤に、極上の岩城の笑み。両頬を挟まれて撫でられて、香藤は跳ね起きる。
「岩城さん・・・」
キスして、と寄ってくる香藤の顔を帰宅してから初めてまともに見た。
「ん?お前、なんか熱いぞ。」
香藤の顔を挟んだ両手に熱を感じる。
「え、俺の平熱、高いの知ってるでしょ?」
確かに香藤の平熱は岩城のそれより0.5度は高い。こんなところまで子供並みか、と思う。
「いや、いつもより熱い。それに顔が赤い。熱、あるんじゃないのか?」
額に掛かる柔らかい髪を上げ、手を当てて熱を測る。
「え?熱?」
言われた本人は、そんなことは想定の候補にも挙がらない、といった顔をしている。
「だるいと言っていただろうが。」
今度は自分の額をつけて測ってみる。やはり熱いようだ。
「あー、そのせいなの?よかった。」
「何がいいんだ?」
再び、手を当てながら言う。
「だって、岩城マジックが効かなくなったんじゃないんでしょ?」
そんなことが熱があることより大事なのか、と半分厭きれている岩城を他所に、香藤はひとり合点をしている。
「ばか。こんな処で寝ているからだ。もっと健康管理をきちんとしろ!」
「また、岩城さんたら嬉しいくせに。そういう時って、俺を怒るよね。」
言われていることが外れているわけではないので、なお更、むかついてくる。
「つべこべ言わずに、早くベッドへ行け!」
「あーあ、また俺、怒られんの?でもいいや。岩城さん、看病して?」
きょうはどこまでも甘えモードな香藤だった。


2005・8・16 harumi


harumiさんからお誕生日プレゼントでいただきましたv
きゃん、香藤くん可愛いv
甘える香籐くんと甘えさせる岩城さん・・・大好きです!
萌え萌えですわ〜v
私も夏風邪ひきたい(待て;)
岩城さんの看病が受けられるならねえv(ねえって・・・?)
とっても素敵なシーンです・・・・v

harumiさん本当にありがとうございました
大切にしますねvvv