| 【 GLAMOROUS MERMAID 】 「泳ぎに行こうっ!」 久しぶりに2人で採る爽やかな朝のブランチ。 2人揃ってのオフを、さあどうしよう?と微笑む岩城さんに、間髪入れずの俺の提案。 「はあっ!?・・・昨夜、海、行ったじゃないか?」 実は、家で、家事でもガーデニングでも読書でもしたかったのかもしれない岩城さん。 スプーン片手に、元気に詰め寄る俺に、ちょっと引いて、怪訝そうな顔。 「違うよっ。泳いでないじゃん。あんな真っ暗な海、見て歩いただけでしょ?偶にはさ、体動かさな いとダメなんだよ。健康の為。体力付ける為にも、さ。」 「・・・そりゃ・・・、そうなんだが・・・。」 「ほら、俺がメンバーのホテルのプール!今聞いてみるから、そこなら、キレイだし、メンバー以外シャットアウトだよ。ね、ね、行こう!?」 「・・・・・うーん・・・。」 イマイチ気の進まなそうな、岩城さん。 プレーンオムレツ、スプーンで掬いながら、口に入れるかどうか、迷ってるみたい。 ちょっと眉を顰めて、俺、イジワルモード。 「・・・岩城さん。・・・昨夜さぁ、・・・そりゃあよーく寝てたよねぇ・・・?」 「・・・う・・・っ。」 「・・・続き・・・しようね?って、俺、言っといたよねぇ・・・?」 「・・・だ・・・、だから、それは・・・っ。」 「岩城さんだけ、スッキリしちゃって、グーグー寝ちゃって、さ。あーあ、昨夜の俺って、すっごく、 可哀想だったって、思わなーい?」 「・・・か、香藤っ!!」 ・・・うろたえてる。うろたえてる。 可愛いなぁ、もぉ。別に岩城さんが悪い訳でもないのに。こういう畳み掛けに弱いんだよね?この人。くすくす。・・・さて、もう一押し! 「・・・やっぱり体力付けた方が、いいんじゃない?」 「・・・・・・。」 「水泳って、いい運動だもん。」 「・・・・・・。」 「ね?行こう?」 「・・・・・・解った・・・。」 「よっしゃっ!じゃ、予約入れてみるねっ!?」 渋々ながらも、岩城さんにうんと言わせてガッツポーズの俺は、るんるん♪と携帯に手を伸ばす。 会員制ホテルのプールは、平日のせいか、貸切出来るとの返事。 岩城さんにそう言うと、貸切という単語に安心したのか、幾分表情が和らいで、じゃあ、片付けて 支度しようと言ってくれた。 ブランチの食器を手際よく洗い、片付けて、岩城さんが先に部屋に着替えに上がっていく。 すると、俺の携帯が鳴った。 ・・・この着メロは・・・っ。 携帯の液晶に浮かぶ発信人の名前は・・・『小野塚 悠』う・・・げっ! 思わず切ろうとして、ぐっと、思い止まり、とりあえず、受信。 『香藤!?おはよっ。』 電話の向こうから、忌々しくも憎らしい元気な小野塚の声。何がおはよ、だ。おはやくねーよ。 お蔭でヤなコト思い出しちゃったじゃねーかっ。 「・・・お客様のお掛けになった番号は、電波の届かない場所におられるか、電源が入っていない為、かかりません。」 ムスッと不機嫌丸出しで言うと、途端に噴出す。 『ぷぷっ。バーカ、なんだよ、それ?』 「うるせーっ。・・・爽やかな朝の一時に、なんでオマエの声なんか聞かなきゃなんねーんだよ。」 『ハハハ・・・っ。そりゃそーか。今日、オフなんだろ?近くにいるから、出てこねえ?』 相変わらず、人をこバカにしてケラケラ笑いやがって。ムカつく奴だ。 「ヤなこった。・・・前回に引き続き、昨夜の件も、覚えてろよ、オマエ?」 『昨夜?何だよ?なんもしてねーじゃん?オマエが勝手に慌てふためいて帰っただけ、だろ?』 「・・・・・・。」 『香藤!?』 「・・・・・・。」 『・・・岩城さん、あのまま爆睡だったの?続き、出来なかったから怒ってんの?』 「うるせっ!!切るぞっ!」 『待てよっ!香藤っ。』 俺は、有無を言わさず携帯を切った。 がうぅーーーっ。・・・思い出しても腹の立つっ! 昨夜、・・・そう昨夜。 潮来の海からの帰り、今朝の食料調達の為に、国道沿いのコンビニに寄ると、間が悪く、あろうコトか、小野塚と宮坂と出くわした。 ・・・しかも、俺の車には、熟睡中の岩城さん。 それというのも、昨日の岩城さんは、なんだか訳解んないコトで半日ずっとナーバスで、俺と浜辺、歩いてて、何やら突然、不安定になっちゃって。 そのまま俺に盛りの火、点けちゃったもんだから、思わず車に連れ込んで・・・ムニャムニャムニャ・・・。 それでよっぽど疲れちゃったのか、シャツは着せたんだけど、そのままぐったり眠り込んじゃって。 俺も早く帰ってゆっくりしようと思ったから、岩城さんにフリースケット掛けて、車から離れてしま ったのが、拙かった。 宮坂が・・・っ、あの腐れ宮坂が、車覗き込んで、俺の岩城さんの寝顔に惚けてやがってーーーっ!! ・・・くそぉっ。 その上、車出そうとキーロック解除した途端、あのバカ、ナビのドア開けやがった!! ・・・あの瞬発力は侮れん。俺の怪我差し引いても、マッスルNO.1獲っただけはあるのかもしれない。 くそくそくそぉーっ。 ・・・そんなコトはともかく。 何が悔しいって、岩城さん、そのままよろけて、宮坂の腕の中で寝惚けたんだっ!! 殆ど全裸に近いカッコしてたってのにっ! 生脚、晒してっ。宮坂の耳元に口寄せて・・・っ!! あぁぁぁーーーっ、俺と間違えてたのは解ってるんだけど、俺の腕だと思ってたのは解ってるから、 責められないんだけど・・・っ!! やっぱりおもしろくないっ!おもしろくないっ!おもしろい訳がないっ!! 宮坂の奴は、岩城さんにマジで惚れてるから、一歩間違えば、どんな恐ろしいコトになっていたコトか・・・っ!! ・・・それを、小野塚のヤローは、涙流して笑ってやがった。くそぉぉぉっ!ムカつくーーっ! 「・・・どうした?香藤?支度しないのか?」 携帯を握り締めて、思い出した怒りに震えていると、外出着に着替えた岩城さんがリビングに戻ってきた。俺を見つめて心配そうな顔。 「な・・・なんでもないよ。俺もすぐ、準備するね。」 引き攣り笑いで、誤魔化して。岩城さんの脇を通り抜ける。 ・・・昨夜のコトは岩城さんには内緒。あんなカッコ、奴らにまた見られたなんて知ったら、どんなに落ち込まれてしまうコトか。また、エッチ禁止令だ、何だと言い出しかねない。・・・危ない危ない。俺は、気持ちを切り替えて、部屋に向かう。 そういえば、小野塚、なんで今日オフだって知ってたんだ? あ、昨夜2人であんな時間に外出してたから、バレたのか。・・・ま、いいけど? ・・・実は、今日、プールに行きたかったのは、・・・小野塚の、奴のせいでも、あるんだよなー。 ※ ※ ※ 今日も、車庫の手前に停めてるのが俺のBMWだったので、お前疲れてないのか?と気遣ってくれる岩城さんを制して、俺がドライバー。大丈夫大丈夫っ。そんなヤワじゃありませんよ、俺? 「ところで、香藤。いつ会員制のプールなんてメンバーになったんだ?」 車を発進させると、ナビの岩城さんが聞いてきた。 「え?大分、前だよ?小野塚と宮坂と一緒に。なんかの勧誘のついで、だったかなぁ?」 「ふうーん。・・・いいようなら、俺も入ろうかな。」 「えっ!?岩城さんがっ!?」 「・・・なんだ、その驚きようは。・・・俺が運動するとおかしいのか?」 「・・・だって、どうせ1人でなんて、行かないでしょ?岩城さんは。」 「・・・うーん。そりゃそうだな。」 ちょっと百面相な岩城さん。可っ愛いなぁ、もお。 ・・・こんな風に、ずっと可愛い岩城さん眺めてられるのって、やっぱり幸せっ。 ケチのついた電話もあったけど、今日はいいオフになりそうだなっと。 ホテルの地下駐車場に着いて、車を停め、メンバー限定のエレベーターで最上階のプールを目指す。 直通なんだよね。これ。 俺達みたいな芸能人でも、一般のお客に見つからずに入れるんだ。 変に騒がれたら、俺の岩城さん、ファンのコ達に奪われちゃうからっ。そんなのヤダもん。 今日、岩城さんは、俺の貸切、なんだからねーっ!? 最上階のメンバー専用プールは、ちょっとアジアンテイストのムード漂う50M仕様。 インテリアはさながら、タイ・プーケットのプライベードビーチって感じ。 意外といいよね、こーゆーの。 俺達だけで貸し切れたから、ホテルマンも、飲み物やウェルカムフルーツのセッティングだけすると、気を利かせて、とっとと下がってくれた。 さあ、2人だけの世界だよっ!?岩城さんっ!俺のマーメイドになって! 「・・・ホントに誰もいないんだな。」 「うんっ。監視カメラ止めて貰ったから、思う存分イチャイチャしようっ!?」 写真集撮影以来の、岩城さんの水着姿。 見慣れているとはいえ、相変わらず大胆な、ちっちゃいビキニ。・・・パールホ ワイト!! ・・・柄がね、鱗みたいなのっ。まさに、きゅーん♪な、俺のマーメイドっ♪ 「・・・香藤。・・・ヨダレ?」 「えっ?あ、えへへ。」 「・・・頼むから、こんなトコで変な気起こすなよ・・・。」 俺のスケベ心もお見通しな岩城さん。 それでも満更でもなさそうに、ちょっとテレて、頬染めて、やっぱり可愛いっっっ! 軽く柔軟なんかしたりして、颯爽とプールに飛び込む。 キっレーイ。うわぁぁっ、俺の岩城さんは、飛び込みもカッコよく、クロールの姿勢もキレイだ! 水の中で、しなやかに伸びる手足の動き。跳ねる水の音。 BGMにアジアンな曲が煩くない程度に流れていても、俺の耳には岩城さんの立てる水音しか届いてこない。端から端まで50M、一気に泳ぎ切って、向こう岸から、岩城さんが顔を上げる。 「・・・お前は、泳がない気か?」 ぶるっと頭を振って、濡れた前髪を掻き揚げる、その仕草。 マジ、ヨダレ出そうに・・・セクシーなの・・・っ!あうあう・・・っ。落ち着け、俺っ。 「泳ぐよー。・・・その前にしたいコトがあるんだ。」 「え?」 「岩城さーん、ここまで、俺のトコまで、もう一度泳いで来て?」 「はぁ?・・・ああ。」 50Mプールの、ちょうど真中辺りのプールサイドに立っている俺。 下に水着着てるけど、まだデニムは脱いでない。 実は今朝、岩城さんがシャワー浴びてる時、TVで、エステのCMが流れていた。 小野塚が某ファッション雑誌のモデルとイメージキャラクターをしているCM見て、ああこれ、岩城さんと俺でやったら、絶対カッコイイ!って、思ったんだよね。 上半身裸で、プールサイドに立つ小野塚。 その視線の先で、全裸のモデルが水中を泳いでいく。 小さな水飛沫と共に、水中から顔を出す濡れた長い髪のモデル。 その細い腕がすっと伸びて、小野塚の腕に脇を支えられて、水から引き上げられる。 その間裸体のラインが映って、なかなか色っぽい。 そのまま顔を寄せて、見つめ合い、・・・ウェットに、唇が絡まる・・・って・・・シーン。 俺に負けない垂れ目の小野塚だけど、それなりに決まってて、なんか悔しい。 モデルもなかなかの美女では、ある。 で・も、俺と岩城さん、程じゃあ、ないよね!? 俺のトコにも、別の某有名エステサロンのCMのオファーが来てる。 コンテ見てないから、まだ返事はしてない。 宮坂も別のエステで、CM流れてるんだけど、これはまた雰囲気が違う。 あれは確か、ベッドのシーツで戯れながら、宮坂と女性モデルの顔と裸体の部分 部分が、交互に 映り変わるタイプだ。メンズもあるサロンだしな。 ・・・まあ、俺が例のオファー受けたら、3つ巴エステ勝負だね。・・・負ける訳ないんだけど。 やっぱ、この小野塚のコンテは俺達向きだと直感した! そんな俺の思惑も知らず、今度は岩城さんてば、平泳ぎだよっ!・・・やーん、エッチ臭いっ! 脚の開き具合が、ああ、ヤダ、たまんない、どーしよーっっ!!? 「香藤・・・?」 「あ・・・。」 冷静に。冷静に、俺、どうどう。 俺の足元まで泳ぎ切って、水から顔だけ出して、立ち泳ぎの岩城さん。 濡れた髪の水滴が、キラキラして、額全開で、すんごい色っぽいのっ!! 俺が手を差し出しすと、きょとんとしながらも、腕を上げる岩城さん。 その脇に手を差し入れて、ぐいっと引き上げる。 引き上げられるままに、俺の顔をじっと見ていた岩城さんは、近付く俺の視線に意図を察して、 目を閉じる。 ・・・可愛いよーーーっ!!どうしてくれようっ! そして、啄ばむキスに、俺がうっとりし出したその時。 「・・・なーるほど。俺への挑戦な訳だ?」 俺達2人の、静寂かつ幸せラブラブモードの雰囲気をぶち壊す、悪魔の降臨・・・だった。 「・・・おーのーづーかー・・・っ!?なんで、オマエがここにぃ・・・っ。」 「今日は。岩城さん。・・・お邪魔して、すみません。」 「わぁっ!小野塚く・・・んっ。」 ぎょっとした岩城さんは、俺の腕を弾き飛ばして、水中に潜ってしまった。・・・あーん。 片手でデジカメ構えつつ、近付いてくる悪魔・小野塚。 後ろには、このヤロウ、また鼻血噴出してるのか、・・・前屈みの宮坂の姿。 「ご挨拶だなー。おい。なんでも何も。ここ、一緒にメンバーになったんじゃん?」 「今日は貸切なんだよっ!!余所行け、余所っ!」 「バーカ。人の話の途中で、電話切るからこーゆーコトになンだよ?近くに来てるって言ったろ? オマエんちのすぐ傍まで来てたのに、電話切るから、どうすっかと思ったら、家からBMW出てくん じゃん?ちょうどいいから、そのまま付けちゃった。」 「・・・付けちゃった・・・って、なーっ。」 「待ち合わせてて、一緒ですよーって言ったら、ホテルはホイホイ入れてくれたぜ?」 「・・・うううっ。」 「・・・相変わらず、詰めが、甘いねーっ、香藤くーん?」 「ぐぐぐ・・・っ!!」 唇を噛み締める俺を、構えたデジカメ、チラつかせて、そりゃあ嬉しそうにニヤニヤと笑う小野塚。 オマエらは、オマエらは、いったいどこまで、俺達の邪魔をすれば・・・っ!! 「確かに、あのモデルより、岩城さんのウエストの方がエロいよな。ん?香藤、これ、欲しい?」 「と、と、撮ってたのか!?」 「ああ。アホ面・香藤が口開けて、岩城さんが泳いでるの眺めてるの図、から、チュまで、かな? ・・・どーする?」 「・・・うぐぐぐ・・・っ。」 「・・・宮坂も欲しいみたいだからなー。・・・どーしよっかなーっ?」 こいつは、こいつは、こいつは・・・っ!! 「宮ちゃーん?・・・これ、いくら出す?」 「・・・オマエの言い値で買う・・・。」 小野塚の後ろでしゃがみ込んで鼻を押さえていた宮坂は、間髪入れずにぼそりと呟いた。 「ダメダメダメーーーっ!!小野塚、テメエ、ふざけんなっ!被写体は俺だけじゃないんだぞっ!岩城さんは・・・っ!」 「やーん、岩城さん、何してても、美人さんだからねー?どーっしよっかなー?」 「小野塚君!・・・君ねっ!」 揉めそうな雰囲気の俺達を察して、水中から顔を出した岩城さんは、プールサイドに自力で這い上がって来た。ぎょっとして、俺は近くのバスローブを、岩城さんの体に巻き付ける。 すると、岩城さんの水着姿にまた興奮したバカ・宮坂が、その場にうっと倒れ込んだ。 「宮坂君っ!?」 どこまで状況を理解しているのか、残酷でお人良しな岩城さんは、俺を突き飛ばすようにして宮坂の元へ駆け寄る。 「だ、大丈夫か?宮坂君?宮坂君?・・・どうしたんだ?」 「ぎゃぁぁぁぁぁぁっっ!!」 「香藤、早く、ホテルの人を・・・っ。」 宮坂の体を抱き起こして、顔を覗き込んでる岩城さん。 きゃぁーーっ!!その姿勢っ、危なーーーいっ!危なーーーいっ!! 宮坂の視線、岩城さんの、岩城さんの、股間だよっ!?直撃だよっ!! 「い、いーんだよ、ヤメなよっ、岩城さんっ!宮坂から離れて!その手、放してっ!」 もう形振り構ってられず、嫉妬全開で岩城さんの肩を掴んで、宮坂から引き離そうとする俺。 「何言ってる、バカっ。いいから、とにかく、ホテルの人、呼んで来いっ!」 小野塚は、堪え切れないとばかりに、こいつまでしゃがみ込んで・・・笑ってやがるっ!! 「呼んで来いっ!香藤っ!!」 岩城さんの剣幕に押されて、仕方なく、俺はプールサイドのインターフォンに向かう。 間もなく、ホテルマンが駆け付けて来て、大量鼻血出血の宮坂介護の為、俺達4人は、ホテルの 1室に歩き出すの・・・だった。 ああ、もおっ!なんでこーなっちゃうのーーーっ!? ※ ※ ※ 「・・・落ち着いた?」 ホテルの1室。 ベッドに宮坂、寝かしつけて、冷たいタオル額に当てて上げたりして、甲斐甲斐しくお世話なんか しちゃう岩城さん。 さすがに着替えたけど、まだ髪は半渇き。 俺はブスっと、その傍で岩城さんに張り付いて、宮坂を睨みつけている。 ちょっと離れたスツールで、小野塚の奴、笑い堪えて、そっぽ向いていやがる。 「・・・すいません・・・。岩城さん・・・、ちょっと逆上せただけで・・・。 」 「血も止まったからね。・・・少し横になってれば、すぐ良くなると思うよ?」 「・・・ホント・・・、すいません・・・。」 ムカムカムカ・・・っ。・・・イライライラ・・・っ! ・・・岩城さんて・・・、岩城さんて・・・っ、どこまで、鈍感なのっ!? 何をどー考えたら、自分に惚れてる男が、自分の体狙ってる男が、自分の水着姿に欲情して鼻血吹いてんのに、心配なんか出来るのっ!? 「・・・岩城さーん、もう帰ろう?宮坂、オマエ、大丈夫だろ?」 ぷぷぷと笑う小野塚。 「香藤。そんな言い方・・・。」 「・・・いいっス・・・。岩城さん・・・。ありがとう・・・ございました。俺、大丈夫です・・・から。」 「宮坂君・・・。」 キィーーーッ!宮坂、テメエ、ブリブリブリやがって!! ・・・小野塚っ、くそっ、テメエ、笑い過ぎなんだよっ! 「・・・そういえば、香藤。お前、・・・泳がなくていいのか?」 今、思い出したみたいに、妙に間抜けなコトを言い出す岩城さん。カチンと来て、ムスっと答える。 「いーよっ、もう。こいつらのせいで、台無しなんだからっ!」 「・・・そんなコト。・・・何しに来たんだ?それじゃ・・・?」 「あーぁっ、もぉっ、岩城さんはっっっ!!」 鈍感鈍感鈍感っ!天然ボケ過ぎっ!ヤダもお、この人―――っ。 キイキイ顔の俺に、ぷぷぷとまた憎々しく笑いながら、小野塚が口を出す。 「・・・岩城さん?香藤はですね?俺のCMを岩城さんとやりたかったんですよ?」 「げっ、小野塚っ、黙っとけよっ!」 「・・・小野塚君の、CM?」 「ええ。エステサロンの。・・・見てくれてません?」 きょとんと小首を傾げて、ああっ!と、手を打つ岩城さん。 「ああ、あれね。・・・バっカだな。お前。」 「・・・だって・・・っ。あのコンテなら、絶対俺達の方が決まると思ったんだもん・・・っ。」 不貞腐れて俺が言うと、苦笑した岩城さんは、 「プールから引き上げるだけだろ?で、キスな訳か?で?そんなの、お前には見えないだろ?何の意味があるんだ?」 と、マジ顔。・・・くらっ。・・・ヒドイ・・・っ、この人、ホントにヒドイ。 「岩城さーん。香藤泣いちゃいますよ?・・・俺は、嬉しいですけど。」 「小野塚君・・・っ。・・・しかし、実際そう思わないか?カメラ回してた訳じゃないし。」 「回してましたよ?ここに?」 「えっ?」 再び、小野塚の手の中でチラつかされるデジカメ。動画も撮れるDVDの最軽量だな。 ・・・ああ、ムカつくーっ。 「・・・撮ってたの?で、・・・どうするんだい?そんなの。君、そんなの、見て、楽しい?」 「なかなかの出来ですよ?岩城さんのマーメイド姿に惚ける香藤の図から、美しい恋人同士の キスシーン。俺は、特に前半が楽しいですね?香藤のアホ面。」 「・・・悪趣味だな・・・。」 「そうですか?でも、香藤と宮坂は欲しいようですよ?コレ。どうしましょうかね?岩城さん?」 「・・・買えってコトかい?」 「コピーですけどね?オリジナルは上げません。」 「・・・まったく。・・・どうする?香藤?欲しいのか?」 「・・・オリジナルが欲しい・・・っ!!」 岩城さんはこめかみを押さえて考え込んでいる。 小野塚は、噛み付きそうな俺を見てニヤニヤ笑っていた。 「・・・まあ、値段の交渉は香藤としてくれ。俺はいらない。それより、宮坂君が回復したら、4人で 食事でもしようか?ちょっと泳いだら、腹減った。」 「ええっ!?ヤダよーっ、俺は、2人きりがいいっ!!」 「・・・買取の交渉しなくていいのか?」 「うぐぐ・・・っ。」 ムカつくムカつくムカつくーーーっ!! なんでせっかくのオフに、せっかくの岩城さんとのプールデートに、こいつらが混ざるのっ!? そりゃあ、岩城さんのマーメイド姿の映像は欲しいけど・・・っ、俺は2人っきりがいいっ! 泳いだ後は、ここのスイートで岩城さんと昨夜の続きを・・・っ!!って思ってたのにーーーっ! 「・・・宮坂君?大丈夫か?・・・食事、出来そう?」 またもや宮坂の額のタオルを替えながら、お人良しな岩城さん。 岩城さんを食べたいです・・・そう言い出しそうな宮坂のブリ面を、思いっ切り、睨む、俺。 この腐れオオカミめっ。起き上がったら、絶対、岩城さんの傍には置かないからなっ! 「・・・はい。もう大丈夫です。起きます。」 「そう?ゆっくり、ね?」 あうあうあうっ。いーわーきーさーーーんっ。警戒、してってばぁっ!! そこっ、小野塚っ、また腹抱えて笑ってんじゃねーーーっ!!殺すぞっ、テメエっ! ああ、もう、ホント、なんでこーなっちゃうんだよーーーっ!? ※ ※ ※ そして、不本意ながら、・・・ホンットに不本意ながら、俺達4人は、ホテルの中の、料亭の1室で かなり早めの夕食を採るコトに。岩城さんは、代行呼ぶか、タクシーで帰ろうと、俺にも酒を勧めてくれる。勿論、悪魔・小野塚と野獣・宮坂にも。 ホントに出来過ぎの奥さんぶりっ。いーんだよ?・・・こんな奴らに気を遣わなくても! 「2人は、お酒、強いの?日本酒で、大丈夫?」 「まあまあですね。・・・岩城さん、強そうですよね?」 「・・・多分ね。君達よりは飲めるんじゃないかな?・・・明日は?仕事、何時から?」 「俺は、11時頃迎えが来ると思います。宮坂は?」 「俺は午後から雑誌の取材。」 「香藤は・・・、金子さん、何時に来るんだ?」 「・・・10時。」 「じゃ、大丈夫だな?多少飲んでも抜けるな?・・・でも、宮坂君は、程々にね?具合悪くなったら すぐ、言うんだよ?」 なんだか、岩城さん楽しそう・・・。若い男侍らせて喜んでるエッチなオバサン、みたいだよ? ヤダヤダヤダっ、もぉっ!! 「・・・どうぞ?岩城さん。」 おずおずと、宮坂、またこいつ、しおらしいっぷりして、岩城さんにお酌なんかせんでいいっ! 「有難う。」 ニコって・・・。あーん、岩城さんのバカバカバカっ!おらっ、宮坂っ、うっとりすんなっての! ぷぷぷ・・・って、また笑ってんじゃないっ、小野塚っ! 「ところで、小野塚君。さっきのVTRの件なんだけど。いくらならオリジナル渡してくれるの?」 小野塚のお猪口にお酌しながら、岩城さんが言う。 「・・・岩城さんから、お金なんか要りませんよ?」 小野塚はしれっと、応えて、頭を下げながら、岩城さんの酌を受ける。 「じゃあ、何が目的?」 「・・・そんなもん、ありませんよ?香藤がジタバタするのが、可愛いだけ、ですから?」 「テーメーエー。」 「こら、香藤、ムキになるな。」 正面の小野塚に、掴み掛かろうとする俺の膝を押さえる岩城さん。 配置は、俺の右が岩城さん。正面に小野塚。岩城さんの正面に宮坂。・・・惚けてるよ惚けてる。 ・・・いい加減、諦めろっての。・・・岩城さんが俺以外、相手にする訳ないん だから! 「ふうむ。」 「・・・綺麗過ぎるってのも、罪なもんですねぇ。岩城さん?」 「・・・何言ってんだか。・・・しかし、困ったな。」 「だから、コピーは上げますって。ここ、岩城さんの奢りでしょ?いいですよ、それで。」 「だ、そーだ?香藤?」 「・・・ダメ。オリジナルじゃないと。こいつらに岩城さんの裸体の映像持たせとくなんて・・・っ。」 岩城さんの拳骨、額にボコッ。 「痛ぁっ!」 「何が裸体だ、バカっ。」 「アハハハ・・・っ!」 「小野塚っ、テメエ、笑い過ぎっ!」 「・・・宮坂君・・・も、要るの?このVTR?・・・香藤と、ベタついてる俺見て、どうすんの?」 あーあ、超・残酷―――っだけど、正しいよ!岩城さんっ! 「・・・はぁ。・・・まあ複雑ですけど、香藤の映像は切りますんで。」 「ぶっ殺すっ!」 「アハハハ・・・っ!!ひぃひぃ・・・っ!!」 「小野塚っ、笑い過ぎだと言ってんだろっ!」 「ふぅ。・・・仕方ない。・・・まあ、とにかく食べよう。好きな物注文していいから。追加して。」 ホント、よく出来た奥さんだよね、岩城さんは。・・・だけど、俺さっきからブチ切れそうなんだけど? 「ほら、香藤?この海老、美味そうだぞ?食べないか?」 「食べるーっ。」 車海老のお刺身の頭を取って、俺に差し出す岩城さん。 ぱくっ。えーん。岩城さん優しーいっ。好きーーーっ。2人っきりなら、このまま押し倒すのにっ! 「コホン。あんまりイチャつかれると、落ち込むバカも出ますんで?」 小野塚は、脇で大人しくしている宮坂をこ突いて、言う。 「・・・・・大丈夫。・・・慣れた・・・。」 「そうそう!どー足掻いても、岩城さんは、俺のなのっ!俺だけの、なのっ!」 「バーカっ、うるせーっ!一回死ねって!バカ香藤っ!」 「・・・やめないか。2人共。・・・下らないっ。」 「わー、岩城さんが1番ヒドイ・・・っ!」 酒宴は、それなりに盛り上がった。 バカバカしい話、続けながらも、4人だと、業界の話題も尽きない。 岩城さんは終始俺達に料理や酒を勧めながら、悪童3人の面倒をマメマメしく見てくれて、いつの間にか、俺も怒りより、優しい岩城さんの気遣いに酔いが回ってきた。 段々、酒が体を巡って、頭がふらふらしてくる。 そのまま気持ちよくなって、いつものくせで、岩城さんの膝に頭を乗せて、腰に抱きつく。 「・・・岩城さーん・・・、好きだよ・・・。」 「・・・ああ。香藤。」 「そこ、世界作らない!」 「・・・岩城さーん・・・っ、俺も好きです・・・っ!」 「・・・ごめんね・・・?宮坂君。」 「あ、鬼っ。」 殆ど出来上がってるのは、俺と宮坂。小野塚は顔に出ねータイプだから、よく解らない。 岩城さんは・・・、ザルだから・・・、もっとわかんない・・・。 俺の頭の上で、岩城さんが・・・、なんか・・・弄ってる。・・・デジカメ・・・? あ・・・、俺のマーメイド・・・、俺にも見・・・せ・・・て・・・・・・。 ※ ※ ※ 「香藤?・・・大丈夫か?」 髪を撫でる感触にぼんやりしながらも、ゆっくり目を開けると、心配そうな岩城さんの顔。 あれ・・・?どうしたんだっけ?ここ、・・・うち? 岩城さん、パジャマ着てる・・・。寝室? 「・・・家?・・・いつ帰ってきたの・・・?」 「大分前に、な。BMWはホテルに預けてきた。明日引き取りに行ってやる。」 「・・・あいつら・・・は・・・?」 「・・・申し訳ないが、彼らの事務所に連絡して、送るから自宅教えてくれとお願いしたら、2人の マネージャーが迎えに来て下さった。後でよくお詫びしないといけないな?」 「・・・岩城さん・・・、飲まなかったの・・・?」 「誰かのヤキモチが怖くてな。・・・殆ど水飲んでたよ?」 「・・・あーん・・・、岩城さーんっ。ごめんなさい・・・っ。」 「・・・なんでお前が謝るんだ?・・・俺が飲ませたのに?」 「だって・・・。」 よくよく目を凝らしてみると、確かに自宅の俺のベッドだった。 岩城さんが俺をここまで運んでくれたの? ・・・大変だったんじゃない?もう、俺の方がウエイトあるのに。 「・・・このまま、寝ろ。それとも水飲むか?」 優しい優しい、岩城さんの顔。結局、せっかくの1日オフが、これ?涙出そう・・・っ。 「なんだ?どうした?香藤?気持ち悪いのか?」 俺は腕を伸ばして岩城さんを抱き締めた。思わず涙ぐむ。しくしく・・・。 そんな俺にくすりと笑って、岩城さんは、頬にキスをしてくれる。 「・・・続き・・・、しないの?」 「・・・なんの続きだ?」 「・・・海の・・・続き・・・。」 啜り泣く俺の頬を撫で、目尻にもう一度優しいキス。 「・・・バーカ。・・・そんなんで、出来るのか?・・・いいから、寝ろ。」 「出来るよ!・・・出来る。・・・岩城さん・・・、したい・・・っ。」 「・・・無理すんな。・・・俺は、お前とこうしてるだけで、・・・いいぞ?」 「ヤダヤダヤダ・・・っ!約束したのにっっっ!!・・・木っ端微塵の約束っっっ!!」 「・・・充分だよ。香藤?もう・・・ちゃんと解ったから。・・・お前はずっと俺を愛してくれるって解ったから・・・。」 「違うのっ。・・・俺が・・・、欲しいの・・・っ。」 「・・・香藤。」 俺が、プールなんかに誘わなければ。 俺が、小野塚達に付けられなければ。 俺が、VTR・・・欲しがらなければ・・・っ! 「あっ、デジカメ・・・っ!?」 俺はやっとそこで、大事なコトを思い出し、岩城さんを抱き締めたまま、大声で叫んでしまった。 「ああ。それなら、消したから安心しろ。」 「えっ!?」 「・・・小野塚君に、カメラ見せてって頼んで、消していいか?って聞いたら、ハイって答えたから。」 「えっ!?」 「・・・まあ、大分酔ってたから、意識があったかどうかは解らないけど、な?」 「えっ・・・!?」 「仕方ないだろ?モデルの許可ナシ映像なんだし。俺もお前が笑いのネタにされるのは気分が悪い。」 「・・・全部・・・?」 「当たり前だろ?」 「なんで・・・っ?」 「・・・なんでって・・・。イヤだったんだろ?俺の水着の映像、人が持ってるの?」 「俺は欲しかったのっ!!」 一気に酔いの醒めた俺は、ガバッと起き上がり、びっくり顔の岩城さんの肩を掴む。 「俺のマーメイド!俺の、俺の、俺のマーメイドっ!!なんで消しちゃったのっ!?」 「・・・バカ。・・・何がマーメイドだ。バカバカしいっ。」 「ううぁぁっあうあうっ。勿体無いっっっ。岩城さんのバカぁーーーっ!!」 肩を揺さぶって悔しがる俺に呆れて、冷めた目で見つめながら、岩城さんは徐に俺の頬を掴んだ。 「いひゃい・・・っ。」 「・・・あのな?香藤?」 「・・・へっ?」 そのまま、顔を寄せて、きっと多分まだ相当酒臭いであろう俺の唇に黙れと言わんばかりのフレンチキス。そっと・・・唇を離して、優しく諭す。 「写真集の時も、携帯の待受写真の時も思ったんだが、お前はおかしい。」 岩城さんの手が、俺の右耳の髪を掻き揚げて。 「他人はともかく・・・少なくともお前には、俺がいる。・・・本物が傍にいて、なんで映像が要るんだ?」 ・・・左耳の髪も指を絡ませ。 「俺は・・・、俺に触れてこない映像のお前なんかに、興味ない。俺を見ないお前なんか、いらない。・・・お前は?・・・ここにいる俺は、・・・写真やVTRに負けるのか?」 額の髪を・・・。 「写真やVTRの俺は、生身のお前に、・・・何もしてやらないだろ?・・・見てるだけでいいのか?」 そして、真っ直ぐ俺の目を見つめて・・・。 「・・・いいのか?」 「・・・岩城・・・さん・・・っ!」 俺は思い切り岩城さんに抱き付いて、その唇に喰らい付いた。そして、そのままベッドに押し付ける。ごめんね?きっと相当お酒臭いよね?でも、ダメ。止まんないっ! 「・・・回復、早いな。やっぱり若いんだよな、お前。」 くすくす笑って、岩城さんは俺に体を預けてくれる。 パジャマを脱がそうとすると、岩城さんも俺のシャツのボタンを外してくれる。 「・・・大好き・・・っ。岩城さん。」 その首筋に口付けて言うと、 「・・・昨夜も言ったぞ?・・・聞こえなかったか?」 俺の耳元にキスして、岩城さんが答える。 「えっ?」 「・・・俺もって・・・な?」 ・・・それからは、熱くて、甘い恋人同士の時間。 俺はやっと当初のオフの目的に辿り着いた。 うーん、酒入ってなきゃ、も少し頑張れたのに。 ・・・ねえ?岩城さん、木っ端微塵の約束、また次のオフまで待てる? ・・・その時は、朝から晩まで、ずっとベッドにいよう、ね? 忌々しい邪魔が、ぜーーーったい、入らないように・・・ここに、ね? おわり 2004/07/22 にゃにゃ |
えへへv にゃにゃさんからお誕生日にと頂いていたんですよ〜v
掲載が遅くなってすみませんでした;;
にゃにゃさんが書かれた(同盟で)シリーズの続編です(^o^)
相変わらず、香藤くんが悪友に振りまわされています(笑)
香藤くんが愛おしい〜v バタバタバタ(転げ回る私・・・)
そして・・・・マーメイド岩城さん!!!!(*^_^*)素敵〜vvvv
さぞかし綺麗に泳がれるんでしょうねえ〜はぅ・・・・私も鼻血です、ええ!(力説)
宮坂&小野塚が良い味出していますわ〜!!
とっても楽しいお話本当にありがとうございます!
にゃにゃさんv 大切にしますね。