今日はオフだ。
こんな日の理想の過ごし方はたった1つ。


それは前の晩から、ずっと岩城さんを独り占めにして
                  (仕事から戻ったら何が何でもひっついて離れない!)、
ベッドの中までひっついて・・・・そしてまったりと朝を迎える。
でも食事はとらないといけないから、俺が簡単な物を作って、
                  (勿論、岩城さんはベッドの中から出ちゃダメ)
2人でベッドの上で遅めの朝食をとる。
そして・・・・また岩城さんを抱きしめるんだ。
新婚なんだからこれが普通でしょう。
ま、新婚じゃなくても、ずっとそのつもりなんだけど。

・・・・・これが俺の理想。
こんな事を考えるだけで顔が緩んでしまうなんて、ホント俺って重症だね。
それだけで幸せになれるからお手軽って言えばお手軽なんだけど・・・。
こんなんだから岩城さんに『お前は脳天気だ』とか言われちゃうのかもしれない。
でも岩城さんだってこんな俺がお気に入りなんだ。
照れ屋だからね・・・・あの人は。
                  (でも・・・そんな岩城さんを知っているのは俺だけで充分)



でもさ・・・・今日はこんな理想は何の役にも立たない。
だって俺だけがオフだから。
1人で過ごすオフなんてつまんないよ。
岩城さんは仕事でもう朝早くからいなかったし、夜もいつになるか・・・。
ま、そんな仕事だから仕方ないけれど。
逆の時もあるわけだし・・・。
陽が高くなっても、こうやってうだうだとシーツの中にくるまっているのもいいんだけどさ、
やっぱりこの腕の中に岩城さんがいてくれるのが一番なんだよね、何たって理想だから。





いつ帰ってくるんだろう・・・・
今日は何の仕事だったけ? 雑誌の撮影?
ああ、もうだから同じ事務所だといいのにって、言うのにさ。
あ、でも撮影っていうと、また岩城さんが多くの人の目に触れるんだ!
・・・・・ああ、嫌かも・・・・・
岩城さん、めちゃくちゃ格好いいし・・・・
普段スーツが多いけれど、ちょっと着くずしたラフな格好っていうのもいいんだよね。
そういう姿は俺以外は見なくていい気もするんだけど。
                    (絶対ダメ、ダメに決まってるじゃん!)
ああ、どんな服装なのかな・・・・考え出したら気になって気になって・・・・。
枕を抱きしめたまま、あれやこれや考えだしたら止まらない。
カメラマンが岩城さんのこと気に入ったらどうしよう。
あの人って無防備だから。
もうちょっと自分の魅力を自覚してくれるといいんだけど・・・・・。
                    (ああいう所も魅力なんだけどね・・・・)
そう言えば先日俺を撮ったカメラマンも岩城さんのこと気にしてたな。
あいつだったらどうしよう・・・・ああ、心配だ!
携帯しようかな、でも仕事中だと繋がらないしな・・・・・。





・・・・・岩城さんも1人でいる時
・・・・・・こんな事考えるんだろうか・・・・・
・・・・・・俺と同じこと・・・・・・・
・・・・・・ううん、考えないよね・・・・・・きっと・・・・・






「香藤?」
帰ってきた岩城は真っ暗リビングの灯りをつけた。
出掛けた様子はないのだから、何処かにいるはずなのに・・・・。
「まさか、もう寝ているのか?」
9時、思ったよりも撮影が長引いてしまった。
それでもスタッフの誘いも断って帰ってきたのだが・・・・。
2階に上がり寝室のドアを開ける。
「・・・・・・」
カーテンも開けっ放しの部屋の中、月明かりのベッドの上でその姿を見つけた。
「何だ寝てるのか。」
そう言いながら近づくと・・・・
「ぷっ・・・」
思わず吹き出しそうになって口を押さえる。
大の字で寝転がって枕を片手に抱き込んで・・・・・まるで大きな子供が寝ているようだ。
あまりの無邪気さに思わず笑ってしまった。

・・・・まったくお前は・・・・・

半分呆れながらも、微笑んでしまう。
そっと髪に触れる。
この表情にどれだけ自分は助けられているのだろう・・・・・
驚く程の前向きな性格でいつも自分を支えてくれる。
あえて御礼なんて言わないけれど。
この気持ちは伝わっていると信じている。






「・・・・・・あれ?」
ふと目を開けた香藤が岩城に気づいて目をこする。
「すまなかったな、予定より遅くなった。」
岩城は髪を触り続ける。
「え・・・・・?」
まだ覚めきっていないのか何回も目をパチパチさせている香藤に岩城は笑いかける。
「なんだ? まだ夢の中か?」
「えっと・・・・・・今、夜?」
「は?」
「えーっと・・・・何時?」
「・・・・・9時過ぎだ。」
「9時・・・えー嘘! だって、さっきまだ朝だったのに・・・・」
うだうだベッドの中で考えている間に、すっかり時間が経ってしまったらしい。
わたわたとしている香藤に、岩城の声のトーンが落ちる。
「・・・・・・・まさかとは思うが・・・・・今日一日ずっと寝てたのか?」
休みの方がするという家事、たまっている洗濯物もの片づけや部屋の掃除もせずに・・・・・・
「え?」
「香藤・・・・」
「あ、あははは・・・・・」
そうみたい・・・・・小さく小さく香藤が呟いた。
すうっと部屋の温度が下がったような気がした・・・・。



「この、馬鹿がーーーー!」



今日も岩城の怒鳴り声が響き渡る。
これも理想の生活・・・・かもしれない。


2003・2・24
日生 舞