『早春』



「これ・・・どうしたんだ?」

帰宅後、先に戻っていた岩城さんに、お土産と言って手に持っていたのを掲げた。

紙袋から慎重に取りだした鉢に岩城さんが身を乗り出してくる。

「撮影に使ったんだけど、持って帰っていいって言われたから貰っちゃった」

幾つか咲いている花がよく見えるように岩城さんの目の前に置いた。

「・・・梅だな?」

「うん、紅と白があったんだけど、白にしたよ」

「そうか」

「岩城さんには白かなあ?とか思って」

岩城さんには白がとってもよく似合うんだよ。

そう言うと、少し照れたように・・・そうなのか?と小さく呟いた。

そして花に顔を寄せる。

程よく枝振りの良い小さな木。

でもその枝にはたくさんの花芽が付いていて、その幾つかは既に綻び始めていた。

「もっと咲いているのもあったんだけど・・・これぐらいの方が楽しめるでしょ」

「そうだな、ああ・・・良い香りだ」

目を閉じている穏やかな顔の岩城さんを見つめた。

その顔を見つめていると心が温かくなる。

仕事の疲れも吹っ飛んでしまうぐらいに・・・

「綺麗だね・・・」

つい口に出た言葉。

でも・・・

「ああ、綺麗な花だ」

と返す岩城さんに、ぷっと吹き出してしまった。

本当にこの人は・・・頬が緩んでしまう。


「なんだ? どうした?」

急に笑いだした俺を不思議そうに見るその顔に手を当てて

そっと頬にキスを落とした。

「大好き・・・岩城さん」

何度言っても足りない言葉を添えて、今度は何か言いたそうなその唇に自分のを重ねる。

甘く・・・梅よりも甘い香りが俺を包み込んだ。



岩城さん、春はもうすぐだね。

梅が咲き

桜が咲き

やがて緑が濃くなっていくね。

それをふたりで楽しめること

それが何よりも幸せだね・・・・


本当に大好き、岩城さん・・・・

俺はもう一度心を込めて呟く。

回された手が強く俺を抱きしめた。






2007・2 舞


※みわさんのサイト「春空」様がオープンされたときにお祝いとして受け取っていただいたものです
でも逆にこんな素敵なイラストまでつけていただいて、とっても嬉しかったことを
思い出します。
いつかまた「春空」様が再開されることを願いつつ、再掲載させていただきました。
たくさんの思い出をありがとうございました・・・・・v