「炬燵」
| 「・・・で、おまえは拗ねているって訳だ」 紙コップに入った珈琲を飲みながら目の前の小さい生き物に言った。 「・・・」 ぷうっと頬を膨らましているそいつは、 自分と大きさがさほど変わらない紙コップの向こうに座っていた。 中身はオレンジジュースらしい。 本当は珈琲が飲みたいらしいが 飼い主さんが(飼い主って言うと怒られるから口には出さないけど) 体が小さいから珈琲はやめていた方がいいと飲ませないらしい。 勿論オレンジジュースは果汁100%だ。 大概あの人も過保護だよな・・・と思わされることが多い。 「でもさ岩城さんが出していた炬燵をしまったのは理由があるんだろ?」 「・・・あるんだろうけど分かんない」 別にこいつが拗ねていようと何だろうと自分自身にはあまり関係ない気もするが 撮影の間、相手をしてやってくれ・・・と言われた身としては仕方がない。 自分の分の撮りが終わったからと、顔を出したらこの小さいのが控え室に一緒に来ていた。 「なんか言われただろう?駄目な理由」 「・・・寝ちゃうからって・・・」 「寝る?」 「うん・・・炬燵、気持ちいいから潜り込んでいたら・・・小野塚もなるだろう?」 紙コップの向こうから顔だけ出して聞いてくる。 「まあ・・・そうだけどさ、今住んでいるところにはないしな、実家帰った時位か」 「だよね、みんなそうなんだ。なのにどうして岩城さんあんなに怒るんだろう」 「そうだな、炬燵で寝る位は・・・って、おまえさそのままで朝までそこで寝てたりするんじゃないのか?」 「え?」 「岩城さんが帰ってきた時にそのまま・・・・って事があったんだろ?」 「・・・あったけど」 それが何?って言う感じで返事をしてきた。 それから・・・ 『岩城さんが帰ってきた時、俺が炬燵布団の中に潜り込んでいて姿が見えなくて見つけられた時すっごくおこられた』 とか 『ちょっと寒いかな・・・と温度を上げたら汗びっしょりになって風邪をひきそうになった』 とか 『服のままで、パジャマに着替えていないと怒られた』 とか・・・・・ 「もういい、分かった分かった」 いつの間にか紙コップの陰から出てきて俺の前に座り込む香藤に手を振る。 それはおまえ・・・何というか、おまえのこと思ってのことだろう・・・と心で呟く。 「炬燵で怒られてばっかり・・・俺は岩城さんと一緒に炬燵に入りたいだけなのに」 一通り言ってスッキリしたような、それでいて寂しそうに香藤が言う。 「それだけなのにな・・・」 ぽつんと言う。 そんな香藤を見ながら俺は椅子に深く座り直した。 なんだろう・・・いつもこのふたりを見ていると すごくくすぐったいような 自分が何処かにもう置いてきたような懐かしい切ない想いを 呼び起こされる。 それが何かなんてきっと分かっているけれど・・・。 「・・・おまえさ、炬燵がないって文句言う前にその願いだけを言ってみれば?」 「願い?」 「そう、岩城さんと一緒に炬燵に入りたいってこと」 単純だ。 すごく単純だ。 でもとっても大切なことなんだろう・・・少なくともこのふたりには。 香藤は黙り込んで・・・コップのオレンジジュースを飲んだ。 「・・・そっか」 何処まで分かっているのかひとりで大きく頷いている。 俺も残りの珈琲を飲み干す。 砂糖もミルクも入れてないのに、少し甘く感じた。 2007・12 舞 |
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香藤が口を利かない。 ゴハンを食べるときも…お風呂の時も…ポケットに入る時も… 原因はわかっている。 俺が炬燵をしまってしまったからだ。 香藤が昼寝をしている間にこっそり片付けてしまった。 「炬燵がない!」 起きてすぐに炬燵のある部屋へ行った香藤はものすごい剣幕だった。 それでも仕方がないと思う。 昨日も家に帰ったら、髪の毛がペタンとした香藤がフラフラ出迎えてくれた。 どうしたんだ?と言ったら、炬燵が暑かったの一言。 少し寒かったらしく、温度を上げて、そのまま眠ってしまったらしい。 全身びっしょりでクシュンとくしゃみを1つ。 その前も帰ったら、姿が見えず、家中を捜し回った。 もちろん炬燵も最初に探したのだが、潜り込んでいて見つけられなかった。 ひょっこり香藤が出てきたので、騒ぎにならなかったのだが。 炬燵を出してから怒ってばかりのような気がする。 いつも俺に怒られてシュンとする小さな香藤。 それは些細な事なのかもしれない。 でも何かあったら…おまえがいなくなったら…そう思うだけでおかしくなりそう になる。 それならいっそ片付けてしまった方がいいとそう思ったのだ。 今朝くらいから何か言いたそうに時々、俺の顔を見上げるのだけど。 「なんだ?」 そういうとプイッと顔をそむける。 めずらしく冷戦状態が続き、途方にくれている岩城に小野塚が声をかけてきた。 「岩城さん。どうしたんですか?浮かない顔してますけど」 「ああ。ちょっと…」 「またチビスケですか?」 「チビスケって。クスッ。気にしてるんであいつには言わないでやってくれるか な」 「はい。すみません。でも岩城さんがそんな顔してる原因ってあいつくらいしか 考えられないんで」 「まぁそれはそうなんだけど。小野塚くん。頼みがあるんだが…」 ・・・もし時間が空いたらあいつの相手をしてやってもらえないだろうか・・・ 控え室に近づくとなにやら楽しそうな声が聞こえる。 「どうした?小野塚くんに相手してもらってたのか?」 「俺が相手してやってるの」 「クスクス。そうか。そうだな」 「岩城さんも珈琲でいいですか?」 「ありがとう。小野塚くん。あっでも俺もオレンジジュースにするよ」 紙コップのオレンジジュースを岩城の前に置き、小野塚はそっと控え室を出た。 これからの話は内緒の話だろうから。 H19.12.21 千尋 |
※コラボ作品第2作目ですv
私の趣味で書いた小野塚くんを千尋さんに素敵に色を付けて頂いた感じですv
最後の岩城さんの台詞、自然な感じで好きです(^o^)
千尋さんありがとうございましたv
お世話になりました〜m(_ _)m