「夏の夜」




トントン・・・トントン・・・

遠慮がちに・・・でも止まらないノックの音で意識が戻った

「ん・・・っ」

和希は身体を起こした

どうやら戻ってきてそのままベッドに倒れ込んでいたようだ

ほんの10分ほどみたいだが・・・・

トントン・・・トントン・・・

まだ続くノックの音

和希はドアを見つめて・・・そして溜息をついて立ち上がった



「・・・・・・」

黙ってドアを開けると思った通りの顔がそこにあった

「お帰り 遠藤」

ドアを開けた方が言われるなんて変な感じだ

「成瀬さん・・・何の用です?」

「君の顔を見に来たんだよ 今日はずっといなかっただろう?」

そしてまだスーツ姿のままの和希を見つめた

「確かめなかったね? 僕じゃなかったらその格好はまずいんじゃない?」

その言葉に和希は何を今更という具合に首を振る

「あんなにしつこくこんな時間にノックしてくる奴なんて他にいませんよ」

成瀬が嬉しそうに笑った



一向に帰る気配がない成瀬を部屋に入れた和希だが

とにかく疲れていた

もう何度もああいった席には出ているし 企業同士の駆け引きも苦手じゃない

でも・・・やはり疲れる

本当ならばこのまま眠ってしまいたいぐらいだ

・・・でも心の何処かで彼と過ごす時間をも求めている自分がいた

「遠藤・・・ごめん疲れてるだろうなとは思ったんだけど」

「・・・別に良いですよ」

背を向けてカップを用意する

「珈琲で良いですか」

そう言ってポットを手にした瞬間後から抱き込まれた

「なっ・・・」

「遠藤・・・」

首筋に温い息がかかり思わず目を瞑ってしまう

「ごめん・・・ごめんね・・・ゆっくり寝かせてあげればいいのに・・・どうしても・・・・」

「成瀬さん・・・・」

「顔が見たくて声が聞きたくて抱きしめたくて」

慣れた匂いに包まれてしまう

和希は身体の力を抜いて回された成瀬の手に手を重ねた



啓太は今頃どうしているのだろう・・・

そんなことを考える

あの人と一緒にいるのだろうか

そしてふたりで語らい 笑い 愛をかわしているのかも知れない

啓太が幸せならば・・・と思い、そしてそれに偽りもない

明日また会えるだろう笑顔を思い浮かべた




「和希・・・何考えてるんだい?」

囁かれながら耳を噛まれた

首をすくめるとより一層強く抱きしめられた

「途中で寝てしまうかも知れませんよ」

諦めを含めながら言えば

「寝かせないよ」

笑みを含んだ声で答えられた



今夜もいつもの夜が始まる

俺は腕を上げ彼の首を引き寄せた・・・






 

残暑お見舞い申し上げますv

2006・8・21
日生 舞