月涼し


「あっ! 岩城さん、岩城さん!」

和室から香藤の声が呼ぶ

その声に手にしていた2つのグラスをリビングのテーブルに置いて和室へと向かう

そして香藤の隣に立った

「ほら、月!」

香藤が見上げる方向に目を移すと 月があった。

空気が澄んでいるのか とても綺麗に見える

「綺麗だな」

そう言うと

「うん!ホントだね」

という返事 そしてぐっと引き寄せられた

「こんな月を岩城さんとふたり こんな風に見上げていると 昼間の暑さは忘れちゃうね」

と、笑いながら言う

その顔を少し見つめて・・・そしてまた月を見た

確かにそうかもしれない



「身体 もう大丈夫?」

腰に手を回したまま香藤が覗き込んでくる

昼間 夏バテからと思われる微熱を出していたので 心配をかけてしまった

あれこれと体調を気遣った食事のおかげで 夕食後は楽になったけれど



「でもあれってジレンマだよね・・・」

「ジレンマ? 何がだ?」

「だって微熱が出ている岩城さんってさ とっても色っぽいんだよ」

「・・・・」

「目が少し潤んでさ・・・もうたまんないんだよね」

「おまえは・・・」

思い出してはうっとりしたように話す香藤に呆れた

「でも身体にとっては良くないから 早くどうにかして楽にしたいし・・・だから軽くジレンマ・・・」

そう言って深い溜息をつく

まったく・・・見ていて飽きないが・・・

「現場でも心配だよ!岩城さんこの時期暑さにやられること多いでしょ」

「まあな」

「ああ!やっぱり!こんな姿俺の他にも見た奴がいるかも!!!」

見たとして・・・それがどうなんだ?と思うのだが・・・・

「清水さんにも気をつけて貰うように言っておかないと!」

そう言いながら香藤は握り拳を握っている

「・・・・香藤・・・頼むから恥ずかしいことをするな」

もう呆れを通り越して諦めのような口調で言えば

「岩城さんったら!本当に無自覚なんだから・・・・」

とぶつぶつ言っている

本当に短い時間に表情がくるくる変わるな・・・・と思いつつ

「大丈夫だ お前の前だと気が緩むのもあるんだろう 普段はそこまでにはならないから」

するとその言葉に う〜んと言いつつ 気をつけてね・・・と額にキスを落とされた

そしてギュッと抱きしめられた

俺も手を回す

空調の効いた心地よい部屋の中で・・・・・・互いの熱を感じた

頬に回った手が顎にかかる

と同時に顔を上げると

「・・・大丈夫?」

もう一度尋ねられた  

さっきとは違う”大丈夫”

香藤の優しい瞳の中に俺がいて・・・・そして目を閉じた







手が 

脚が 

そして腰が

畳の上を動き

音を立てた

月明かりだけの部屋に小さな音とふたりの息づかいが響く



「か・・・かと・・・っ」

そう呼べば宙に伸ばした手を掴まれて身体を起こされた

「あ・・・んっ・・・・」

より奥に感じる熱に身体を反らせる

「岩城さん・・・・綺麗・・・・月なんて問題にならないほどに・・・」

そう耳元で囁かれて・・・・抱きしめられた

深く深く注ぎ込まれる愛に

今は素直に答えたい


名を呼び合いながら抱き合った

目指す頂点へ向かって・・・





残暑お見舞い申し上げます・・・・v
2006・8・12
日生 舞